【シナリオ版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

第十三話



○帰りの新幹線の中(昼下がり)
 窓側に和仁、通路側にジェシカが座っている。スマホの写真を見ながら旅の思い出を思い返すジェシカ。

ジェシカ「(新婚旅行楽しかったなぁ…全部楽しかったし、お料理も美味しかった。
一緒にお風呂に入ったり、夜も……)」
ジェシカ「……」※思い出して赤面
ジェシカ「(キャーーッ♡)」

 一人で百面相するジェシカ。こてん、とジェシカの方に寄りかかる和仁。静かに眠っている。

ジェシカ「(和仁さん…疲れたのかしら?寝顔かわいい♡)」

 寝顔にときめきながら、きゅっと手を握りしめる。

ジェシカモノローグ「何だか前よりもっと和仁さんとの距離が近くなったように感じる。
過去のことを話してくれて、より和仁さんのことを知れたからかしら」

 ちゅっと寝ている和仁の頭にキスをする。

ジェシカ「(これからもっと和仁さんのことを支えていきたい…私にできることなんて大したことないかもしれないけど)」
ジェシカ「…ずっと傍にいますね」


○吉野家・玄関(夕方)
 京都から帰って来た二人を出迎える舎弟たち。

ジェシカ「ただいま!」
舎弟たち「兄貴!姐さん!お帰りなさいやせ!!」
和仁「ただいま。変わりないか?」
笹部「はいっ!兄貴の留守は俺たちがしっかりと守りました」
千原「姐さん、楽しかったっすか?」
ジェシカ「ええ、とっても♡」

 ぺかーっと全身から幸せオーラがダダ漏れのジェシカ。

千原「ま、眩しい…っ!!これが世に言う幸せオーラ!!」

 ジェシカの幸せオーラに当てられている舎弟たちのディフォルメ。ちょっと離れたところで呆れたように見ている和仁のディフォルメ。

笹部「ところで姐さん、今朝大量に送られて来た生八ツ橋なんですが…」
ジェシカ「あら届いたのね!早かったじゃない!みんなへのお土産なんだけど、持ち帰れないから送ってもらったの」
笹部「姐さんの気遣いは嬉しかったんすが……多すぎっす!!」

 ドーン!と生八ツ橋の箱が百箱以上積み上げられている。

千原「もう食えねえっす!!」

 他の舎弟たちも青い顔をしているディフォルメ。もうこれ以上は食べられないと訴える表情。

ジェシカ「京都と言ったら生八ツ橋だと思ったのだけど…いらなかったかしら?」※残念そう
笹部「野郎どもぉ!!姐さんの気持ち無駄にするんじゃねぇ!!何が何でも食うぞ!!」
舎弟たち「おうっ!!」

 うおーーっ!!と鼓舞する舎弟たち(本音はこれ以上食べられなくてしんどい)。
 舎弟たちとジェシカがわちゃわちゃしているのをやれやれ、と言った様子で見ている和仁と楽しそうな峰。

和仁「だから多すぎると言ったんだ…」
峰「若の言い分を無視するとは姐さんは流石だな」※クスクス

 ニヤニヤしながら和仁の顔を見る峰。

峰「それに若をここまで骨抜きにするとはね」
和仁「…峰、指詰めるか?」
峰「まあまあ。でも、よかったな和仁」

 とても穏やかに優しく笑う峰。和仁とは元々幼馴染なので気心知れており、たまに昔みたく和仁と呼ぶ。

峰「和仁の全てを受け止めてくれる人と出会えて」

 ちょっと虚をつかれたような和仁のアップ。すぐに真顔に戻る。

和仁「……やっぱり指詰めろ」
峰「照れなくてもいいのに」※ニコニコ


○新婚旅行から一ヶ月後・庭(午前)
 庭には夏の花が咲き始めている。水やりをしているジェシカ。

ジェシカ「お庭もとっても綺麗になったわね!」

 庭の前を通りかかった舎弟。

ジェシカ「あっ見て!お庭がこんなに綺麗になったのよ」
舎弟「はっ!!あっ、姐さん!」※しどろもどろ
ジェシカ「どうしたの?」
舎弟「なんでもねぇっす!綺麗っす!!」

 慌てたように逃げていく。

ジェシカ「あっちょっと!どうしたのかしら…?」

 その後も何故か舎弟たちがよそよそしい。
 ジェシカが話しかけると、みんな慌てたように誤魔化し逃げていく様子のディフォルメ。


○帰り道(夕方)
 華道教室からの帰り道、落ち込みながら帰宅するジェシカのアップ。ズーンという効果音。

ジェシカ「(私何かしたかしら…!?)」

 歩きながら悶々としている。

ジェシカ「(何かみんなを困らせるようなことしちゃった?)」


○玄関
ジェシカ「(気になってあんまり上手く生けられなかったなぁ…)」
ジェシカ「ただいま…」
和仁「おかえり」
ジェシカ「あれ、和仁さん早かったんですね?」
和仁「ちょっとな。ジェシカ、ちょっと来れるか」
ジェシカ「あ、はい」


○居間
 居間に入った途端、パーン!とクラッカーが弾ける。

ジェシカ「え……」
舎弟たち「姐さんお誕生日おめでとうございます!!」

 笑顔でジェシカを祝う舎弟たち。その後ろには雑な文字で「お誕生日おめでとうございます」という弾幕と飾り付けがされている。

和仁「おめでとう」
ジェシカ「ええっ!?」
ジェシカ「(う、嘘……)」
ジェシカ「私って誕生日だったんですか!?」
和仁「…忘れてたのか」
ジェシカ「(言われてみればそうだったかも…何年も誕生日なんて祝われてなかったから忘れてた…)」
ジェシカ「(最後に誕生日を祝ってもらったのなんて、マムが亡くなる前だった)」

 食卓には山盛りの唐揚げ、餃子、ポテトサラダ、スープといった料理が並んでいる。

ジェシカ「みんなが作ってくれたの?」
千原「大体兄貴が作ったっす!」
和仁「おい!言うな!」
千原「いいじゃないっすか。俺らは手伝っただけっすよ」
ジェシカ「和仁さんが…?」

 照れ臭そうに頬を赤らめる和仁。

和仁「…君にはいつも感謝してるから」
ジェシカ「……」

 ダーッと無言で涙を流すジェシカのディフォルメ。

和仁「なっ…ジェシカ!?」
ジェシカ「ごめんなさい…嬉しくて…っ」
和仁「ジェシカ…」
千原「兄貴が姐さん泣かした!!」
舎弟たち「泣かした!」「良くないっすよ!」
和仁「うるさいお前たちっ」

 ぎゃあぎゃあ騒ぎながら笑っている舎弟たち。
 ジェシカも泣きながら笑っている。

ジェシカ「みんなありがとうございます…!」

 みんなで誕生日会(という名の宴会)をしているシーン。
 料理を食べたり、舎弟たちからドデカイ袋に入ったプレゼントを渡されたり、中身を開けたらデカすぎるテディベアが入っていたり。
 何に使うんだ…みたいな顔してる和仁とすごく嬉しそうなジェシカ。
 ケーキを食べているシーンも台詞なしのダイジェスト風で。


○寝室(夜)
ジェシカ「すごく楽しかった!あんなに賑やかな誕生日、初めてです!」
和仁「賑やかすぎたけどな」

 ドンチャン騒ぎすぎて酔い潰れた舎弟たちのディフォルメ。

ジェシカ「和仁さん、ありがとうございました。私の誕生日知ってたんですね」
和仁「妻の誕生日くらい知っている」
和仁「(峰に調べさせた時に知ったんだが)」
ジェシカ「嬉しい」※ほわっとした笑顔
和仁「ジェシカ、これを」

 手のひらサイズの小さな箱を差し出す和仁。
 蓋を開けると、お揃いの二つのリングが輝きを放っている。

ジェシカ「え……」
和仁「遅くなったが、結婚指輪がやっとできた」
ジェシカ「(結婚当時は断った指輪、本当に買ってくれたんだ…)」

 ジェシカの左手を取り、薬指に指輪を嵌める。
 和仁の指輪はジェシカが嵌める。
 二人の左薬指に嵌められた指輪のアップ。

ジェシカ「あ、どうしよう…すごく嬉しい…」

 指輪を見つめて胸がいっぱいになるジェシカ。

ジェシカ「こんなにもらってばかりでいいんですか…?」
和仁「もらってばかりいるのは俺の方だ」

 そっとジェシカの頬に触れる。
 視線が絡み合う二人、その後目を閉じて顔が近づく。

ジェシカ「うっ」

 唇まであと数センチというところで急に口を押さえるジェシカ。

ジェシカ「ちょ…っ、ごめんなさ…!」
和仁「ジェシカ!?」

 ダッシュで寝室を飛び出し、トイレに駆け込む(吐いてしまう)。
 しばらくしてトイレから出てきたジェシカ、気持ち悪そうにしている。和仁、心配そうにジェシカの顔を覗き込む。

和仁「大丈夫か?」
ジェシカ「はい…何だか急に吐き気がして…さっきまで何ともなかったのに」
和仁「食べ過ぎたか?」
ジェシカ「そうかもしれません…」
和仁「念のため聞くが、最近月のアレはきたか?」
ジェシカ「えっ」
ジェシカ「(そういえば最後にきたのいつだっけ…)」
和仁「…今すぐ病院へ行くぞ」
ジェシカ「えっ!?今から!?」
和仁「ああ」
ジェシカ「この時間じゃ無理ですよ!」
和仁「じゃあ明日の朝一だ。明日の予定はキャンセルする」
ジェシカ「ええっ!?」
和仁「昔から世話になっている医者に連絡しておくから。今日はもう寝るぞ」
ジェシカ「(え、えぇーー!?)」

 戸惑うジェシカのアップ。


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