【シナリオ版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

第四話



○華道教室
 花を生けながら悶々としているジェシカ。

ジェシカ「(この前のアレはなんだったの!?)」

○三話の回想
 和仁に抱きしめられるシーン。

○現在・華道教室
 思い出して赤面するジェシカ。
 うわーってなって夢中で花を生ける。

ジェシカ「(深い意味はないとは思うけど!あんなことされたら…気になっちゃう!!
和仁さんは優しいから、私に同情してくれたのよね…)」
ジェシカ「でもやっぱり気になっちゃう…」

 華道の先生がジェシカの生けた花を見て、若干顔を引き攣らせている。

先生「あらジェシカさん…なかなか独創的ねぇ」
ジェシカ「え?」

 かなりメチャクチャに生けられた花。

ジェシカ「あれ!?やだ、ごめんなさい!」
先生「もしかして、何か悩んでる?」
ジェシカ「え?」
先生「枝の切り方とかなんだか悩んでいるように感じるわ」
ジェシカ「あ、そんな感じかもです…」※苦笑い


○華道教室からの帰り道
 とぼとぼと歩きながら溜息を吐くジェシカ。

ジェシカ「(華道ってそういうこともわかっちゃうんだなぁ…)」

 目の前に仲睦まじく歩いているカップルの姿が目に入る。

ジェシカ「(なんだろう…今までは気にならなかったのに、仲の良いカップルや夫婦を見てると羨ましくなる。
私なんて置いてもらえてるだけで有難いのに)」

ジェシカ「気分転換に買い物でもしようかしら」


○翌日・玄関(午前)
 ジェシカ、靴のかかとをトントンする。
 ワンピースを纏ったお出かけスタイルで出かけようとするジェシカ。
 そこへラフな私服姿の和仁が声をかける。

和仁「出かけるのか?」
ジェシカ「きゃっ!?」
和仁「…そんなに驚かなくても」
ジェシカ「ごめんなさい。ちょっとお買い物に行こうかと」※若干ドキドキしている
和仁「車を出そうか?」
ジェシカ「えっ!?いや、大丈夫です!」
和仁「この近くなのか?」
ジェシカ「××のデパートまでですけど…」
和仁「なら車の方が楽だな。鍵を取ってくる」
ジェシカ「待ってください!」
ジェシカ「(和仁さんったら急にどうしたの!?)」
ジェシカ「和仁さん、今日はお休みでしょう?申し訳ないです…!」
和仁「気にするな。久々の休日ですることがないんだ」


 スタスタと車の鍵を取りに行く和仁。ジェシカ、戸惑いの表情を浮かべながら玄関にポツンと佇む。


○車の中
 運転席でシートベルトを絞める和仁と緊張した面持ちで助手席に座るジェシカ。

和仁「行くか」
ジェシカ「よろしくお願いします…」
ジェシカ「(どういうこと!?なんでこんなことに??)」

 チラリと和仁に視線をやるジェシカ。
 運転する和仁の横顔のアップ。

ジェシカ「(和仁さん、普通だな…何もなかったみたい。和仁さんにとっては何でもないこと…?)」
ジェシカ「(そうかもしれない。私に同情してくれただけなのかも)」

 再度和仁をチラ見するジェシカ。

ジェシカ「(それにしても運転してる和仁さん…カッコ良すぎるわ♡♡)」※デレっとしているディフォルメ


○デパート
 花瓶などの陶芸品が売られているフロア。

和仁「で、何が欲しいんだ?」
ジェシカ「生花用の花瓶や水盤が見たいんです」
和仁「へえ」
ジェシカ「物置に使ってない花瓶があったんですけど、欠けてるものもあって。だから自分で選んで買ってみようかなって。あっ、これなんてかわいい!」

 ジェシカ、丸い形をした花瓶を手に取る。その隣には三角形の花瓶もある。

ジェシカ「三角のもいいなぁ」
和仁「……」←何がいいのかわかってない

 三角形の花瓶の値札を見て、ジェシカはギョッとする。0の数がかなり多い。

ジェシカ「(これは予算オーバーね…)」
ジェシカ「別のにしようかなっ」

 手に取った花瓶を元に戻す。それを和仁が手に取る。

和仁「別にいいんじゃないか?」
ジェシカ「もう少し安い方がいいかなって…」
和仁「たまには奮発したらどうだ。あのカード、全然使っていないんだろう」
ジェシカ「私のお金じゃありませんし、無駄遣いはダメですよ」
和仁「華道は無駄なことなのか?」
ジェシカ「え?そんなことは……花そのものの生きた素材を活かす芸術は、日本独自の素晴らしい文化だと思います」
和仁「ならそのために使う花瓶は無駄遣いなんかじゃないだろう」
ジェシカ「…!」
ジェシカ「(そんな風に思ってくれるなんて…)」
ジェシカ「本当だ、全然無駄なんかじゃありませんね」※頬を染めて柔らかく微笑む。キラキラエフェクトでとにかくかわいらしく
和仁「……っ」※頬を赤らめる

 嬉しそうに花瓶を手に取るジェシカ。

ジェシカ「ありがとうございます!これ買ってきます」

 ニコニコしながら花瓶を持ってレジへと向かうジェシカ。
その姿を見つめて赤面してる和仁のアップ。ジェシカは気づいていない。

和仁「……」


○デパート・別フロア
 花瓶を買った袋を抱きしめてご機嫌なジェシカ。その紙袋を和仁がヒョイと持ち上げる。

和仁「持とう」
ジェシカ「大丈夫です!そんなに重くないし」
和仁「いいから」
ジェシカ「ありがとうございます…」
ジェシカ「(ああ、どうしよう…嬉しくてドキドキが止まらない…和仁さんはどうしてそんなに優しくしてくれるのかしら?)」
ジェシカ「(最初は私の顔を見ようともしなかったのに、最近は目を合わせてくれる。それだけでも嬉しい…)」

和仁「他に見たいものは?」
ジェシカ「あっ!えっと、そうですね…!」
ジェシカ「(他には何も考えてなかったわ!!)」

 ふと本屋があるのを見つける。

ジェシカ「あの、本が見たいです」
和仁「本か」

○本屋
 洋書コーナーに行き、海外の小説を物色する。

ジェシカ「あった!この小説が読みたくて」
和仁「英語なのか」
ジェシカ「そうなんです。日本語訳もあるんですが、母は日本語の読み書きは得意じゃなかったので絵本とかは全部英語だったんです」

子どもの頃、英語の絵本を読み聞かせてもらったことを思い出すジェシカ。

ジェシカ「子どもの頃から自然と英語も日本語も身についていたので母には感謝してます」
和仁「そういえば君が英語を話しているところは見たことないな」
ジェシカ「まあ…喋る機会ないですしね」
和仁「Would you like to try speaking English sometime?(たまには英語で話してみるか?)」
ジェシカ「ええっ!?」
ジェシカ「(ものすごく流暢な発音…!)」
ジェシカ「Speaking English?(英語話せたの?)」
和仁「ほんの少しな。流石にネイティブには負ける」
ジェシカ「でも綺麗な発音でした!」
和仁「それはよかった。極道のくせに意外だろう?だが案外役に立つんだよ」
ジェシカ「すごいです…!」
ジェシカ「(英語も話せるなんて和仁さんって完璧すぎない!?こんなに優しくてハイスペックな人が極道の次期組長だなんて到底思えない)」

 本を買って本屋から出て行くシーン。

ジェシカ「(そういえば私、和仁さんのこと何も知らないわ。極道がどんなことをしてるのかも全く知らない。
お飾り妻は知らなくていいことなのかもしれないけど、ちょっと寂しいような…)」

 ぐーーーーというお腹の音。ジェシカの腹の虫が鳴る。
クスッと笑う和仁。

和仁「何か食べて帰るか」
ジェシカ「えっ!?あ、その…」※恥ずかしそうに俯く
和仁「昼時だしちょうどいい」
ジェシカ「あ、じゃあその…食べたいです」
ジェシカ「(今更だけど、何だかデートしてるみたい――)」


○謎の人物の視点
 恥ずかしそうに頬を染めるジェシカと少し楽しそうな和仁を謎の男が見ている。顔は見えないが、憎々しげに睨み付けている。不穏な雰囲気。

???「吉野和仁…絶対に許さねぇ……っ」


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