【シナリオ版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

第七話



○玄関(朝)
 スーツのネクタイを締める和仁とそれを見守るジェシカ。

和仁「今日は他の支部との会合で遅くなる」
ジェシカ「はい、お気をつけて」
和仁「先に寝てていい」
ジェシカ「わかりました」
和仁「ジェシカ、」
ジェシカ「!」

 軽くキスする。

和仁「行ってくる」
ジェシカ「…行ってらっしゃい」

 ドアが閉まり、和仁が出ていく。
 ほう…っと先程のキスの余韻に浸っているジェシカ。

ジェシカモノローグ「一夜を共にして以来、私たちの関係は劇的に変わった。
和仁さんは毎日優しいし、必ず予定を教えてくれるようになったし、夜ごとに私を求めてくれる」

和仁「(何より意外なのが和仁さんって意外とスキンシップ多いのよね。キスもハグも毎日してくれるし)」

 家の中を掃除するジェシカ。鼻唄を歌いながらご機嫌。

ジェシカ「(はぁ…これが新婚生活…)」
ジェシカモノローグ「遅れてきた本当の新婚生活は毎日が幸せでいっぱいだった」
ジェシカ「(私こんなに幸せでいいのかしら?思わず小躍りしちゃいそうだわ〜)」

 ワイパーをかけながら踊るジェシカのディフォルメ。「姐さんご機嫌っすね〜」と見ている舎弟たちのディフォルメ。


○華道教室(昼)
 華やかで見事な生け花。先生、感嘆の声を上げる。

先生「まあ素敵!かなり上達したわね」
ジェシカ「ありがとうございます!」
先生「花に幸せの色が溢れてるわ。何かいいことあったの?」
ジェシカ「え?そうですか?」


○華道教室からの帰り道
 ご機嫌で歩いているジェシカ。

ジェシカ「(やっぱり生け花にも滲み出ちゃうのかしら)」
ジェシカ「あ、そういえばガーデニング用の肥料がなくなりそうだったんだ」

ジェシカモノローグ「趣味も充実してるし、間違いなく今が生きている中で一番幸せ」

○近所のホームセンター
 ガーデニングの肥料を物色するジェシカ。

ジェシカ「(うーん…流石に重いと持ち帰れないから車で行った方がいいかしらね)」

観葉植物コーナーを見て回る。小さくてかわいいサボテンなどが並んでいる。

ジェシカ「(サボテンってこんなにかわいいんだ!一つ買っちゃおうかしら。これなんてネズミっぽくてかわいい♡)」

 ネズミのような形をしているサボテンを手に取ろうとして、別の人の手と触れ合ってしまう。

ジェシカ「あ、すみません」
???「こちらこそすみません」
ジェシカ「あら…?」

 茶髪でふわふわした猫っ毛の若い男性のアップ。スーツを着ている。

ジェシカ「悟くん!?」
悟「ジェシカじゃん!久しぶりだなぁ!」

梅津(うめづ)(さとる)
茶髪猫っ毛の人懐っこそうな青年。ジェシカの大学時代の友人。

ジェシカモノローグ「彼は梅津悟くん。大学時代同じゼミだった数少ない友人だ」

ジェシカ「久しぶりね!大学以来じゃない?」
悟「だな!元気してたか?」
ジェシカ「ええ、元気よ。悟くんは今何してるの?」
悟「日用品メーカーの営業。ここも外回りで寄ったんだ」
ジェシカ「へーすごい!」
ジェシカ「(人懐っこくてコミュ力抜群の悟くんなら営業も向いてるんだろうなぁ)」
悟「ジェシカは何してんの?」
ジェシカ「あ、私は…実は結婚したの」
悟「ええっ!?マジで!?おめでとう!!」
ジェシカ「ありがとう」
ジェシカ「(そういえば結婚のこと元職場以外で話すの初めてかも。結婚式は身内だけだったし)」
悟「ゼミの面子で一番じゃね?誰が一番に結婚するかって話してたけど、ジェシカだったか〜」
ジェシカ「そうみたいね」
悟「苗字何になったの?」
ジェシカ「吉野よ」
悟「吉野……?」

 ずっと笑顔を向けていたが急に笑顔が消える悟。

ジェシカ「ええ、吉野ジェシカになったの」
悟「…へぇ。そっか!いいじゃん!」※笑顔に戻る
悟「あっ、このサボテンはジェシカの結婚祝いってことでプレゼントするよ」

 サボテンを持ち上げ、レジに向かおうとする悟をジェシカは慌てて止める。

ジェシカ「えっいいのに!」
悟「いーじゃん、せっかくなら祝わせろって!」

 そのままレジに持って行き、袋に入ったサボテンを差し出す。

悟「改めておめでとう」
ジェシカ「ありがとう、悟くん」
悟「俺もサボテンとか観葉植物好きなんだ。今度見せてやるよ」
ジェシカ「楽しみにしてる」
悟「それじゃあまたな!」

 ヒラヒラと手を振って悟と別れる。


○寝室(夜)
※ベッドを移して寝室を一緒にした。モダンな雰囲気で中央にキングサイズのベッドがあり、サイドテーブルがある。

 ジェシカ、サボテンをサイドテーブルに置く。
 キングサイズのベッドに思い切り寝転がるジェシカ。

ジェシカ「一人で寝るには広すぎるわよね〜」
ジェシカ「(あれからずっと一緒に寝てるから一人で寝るのが寂しくなっちゃった…)」
ジェシカ「先に寝てていいって言われたけど、待ってようかな…」

 サイドテーブルに置いたサボテンを手に取り、寝転がったままサボテンを見つめるジェシカ。

ジェシカ「このサボテン和仁さんに見せたいなぁ」

 ジェシカのスマホが鳴る。画面に表示された名前は「悟くん」。

ジェシカ「もしもし悟くん?」
悟『もしもし、ジェシカ?昼間はサンキューな』
ジェシカ「お礼を言うのはこっちよ。サボテンありがとうね。かわいくてすごく嬉しい」
悟『いやいや!つーかジェシカが植物に興味あったの知らなかったなぁ』
ジェシカ「最近ハマったの!それより悟くん、何か用だった?」
悟『あ、ごめん。急に電話して悪かったな。ジェシカに聞きたくてさ』
ジェシカ「うん何?」
悟『ジェシカの旦那さんって何してる人?』
ジェシカ「えっ」
ジェシカ「(和仁さんの仕事?極道なんて言えないわよね!?)」
ジェシカ「…会社経営かな」
悟『マジで!?実は取引先に吉野って社長がいてさ!もしかしてその人!?と思って』
ジェシカ「え?えーーと…」
悟『名前はカズトっていうんだけど!』
ジェシカ「そうなんだ。でも主人の名前は和仁だから違うわね」
悟『あ〜〜惜しかったな!別人かぁ。悪りぃジェシカ、ありがとな!』
ジェシカ「ううん」
ジェシカ「(吉野カズトさんなんてニアミスね)」

 悟との通話を終える。急に眠気がきて、あくびをするジェシカ。

ジェシカ「(ダメだ眠い…やっぱりお先に休ませてもらおう…)」

 布団に入って横になる。

ジェシカ「(…結局私は和仁さんが何をしてるのか何も知らないわ…極道の世界がどんなものなのか)」

○回想
男「吉野和仁は人殺しなんだよ!!」

○回想終了・ベッドの上
ジェシカ「(何があっても私は和仁さんを信じてるし受け止める覚悟はできてる…)」

 人殺しという言葉が気になりながら、寝落ちる。


○寝室(深夜)
 帰宅して部屋に入った和仁。

和仁「ただいま…」

 ベッドの上で猫のように丸まりながら眠るジェシカ。
 眠るジェシカの隣に座り、愛おしそうにジェシカの頬を撫でる。

ジェシカ「ん…」
和仁「すまない、起こしたか?」
ジェシカ「おかえりなさい」※へにゃ、と笑う
和仁「…ただいま」

 ジェシカの頬にキスを落とす。

ジェシカ「えへ…」※嬉しそう
和仁「(かわいい)」
ジェシカ「…和仁さん」
和仁「ん?」
ジェシカ「疲れてますか?」
和仁「まあそれなりには…」
ジェシカ「…そうですよね」

 明らかに寂しそうなジェシカのカットとジェシカの意図を察して、雄み溢れる表情でジェシカを見下ろす。

和仁「妻を抱く体力はあると言ったらどうする?」
ジェシカ「〜っ!」※顔を赤らめる
和仁「ん?」※言わせたい
ジェシカ「…まだ寝たくないです」

 シュル、とネクタイを外す音。着ていた服が脱ぎ捨てられる。

ジェシカ「ん…っ」

キスをしてジェシカの耳を甘噛みする。

ジェシカ「和仁さん…っ」
和仁「…っ」
和仁「(ジェシカといると理性が効かなくなるな…)」

和仁モノローグ「ジェシカに触れる度に怖くなる。
散々人を傷つけてきた俺の手が君を壊してしまうのではないかと。
でも、」

ジェシカ「あ…っ」

和仁モノローグ「君の全てが愛おしくて、君が欲しくてたまらない」

 何度もキスして抱き合う二人。とにかくキュンキュンするイチャイチャなシーン。


○翌朝
 ジェシカを抱きしめたまま目覚める和仁。まだ起きる気配のないジェシカの寝顔を愛おしそうに眺めている。
 サイドテーブルに置かれていた小さなサボテンの存在に気づく。

和仁「(ジェシカが買ったのか?)」

 ブブ…というジェシカのスマホが震える音。サボテンの隣にスマホが置かれている。
 スマホの画面にメッセージの通知が表示される。

悟くん「サボテンの育て方わかる?」
悟くん「わかんなかったら教える!」

 それを見た和仁は驚きと複雑さが入り混じった表情になる。
 ヒキでスマホを見つめる和仁の横顔と隣で眠るジェシカのカット。


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