傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
「……丞……」

 名前を呼ぶ、たったそれだけの行為なのに、顔が真っ赤になる程恥ずかしくなるのは何故だろう。

 それだけなのに、「……やべ、何か、スゲェ嬉しいんだけど」と口にしながら笑みを見せる彼を愛おしいと思ってしまう。

 返事を保留にはしているけれど、いくら期間を空けても、私の中で答えは決まっているような気がするけど、あと一歩が踏み出せない。

 好きだから、大切だからこそ、もしまたいつものように駄目になってしまったらと思うと、どうしても怖くてたまらないのだ。

(一之瀬はこれまでの元カレたちとは違うって分かるけど……付き合って、駄目になりたくない……)

 これまでの男運が悪過ぎてトラウマになっている私は、答えを出す事を渋ってしまう。

 でも、だからってこんな風に付き合ってもいないのにキスをするのは違う気もする。

 それに、多分このままじゃ、キスだけで済むはずも無いし、恋人でも無いのにまた身体を重ねてしまっては、それはただの『セフレ』になってしまう。

 私が名前を呼んだ事に喜ぶ一之瀬は嬉しさからギュッと抱き締めてくれて、その温もりを感じながら私は、どうすればいいのか悩んでいた。

 そして、そんな私の悩みを見透かしたかのように一之瀬は抱き締める力を緩めて身体を離すと、こう口にした。

「…………三ヶ月」
「え?」
「今日は九月の終わりだろ? だからさ、今年が終わるまでの三ヶ月間、お試しで俺と付き合ってよ。そんで、その間にきちんとした答えを、出して欲しい」

 今年が終わるまでの三ヶ月間お試しで付き合い、その間に答えを出して欲しいと。

「でも……」
「ただ、お試しだろうと俺はお前にアタックするのを止めねぇし、仮でも彼氏だから、身体を求める事だってするし、束縛だってすると思う。それが嫌なら、後腐れなく、今すぐ返事をして欲しい。やっぱり俺、お前をこの手に抱いてると、歯止め効かなくなっちまうんだ……保留のままお前を抱くなんてそれじゃあセフレと変わらねぇから嫌なんだ……仮でも、『恋人』ってきちんとした関係の証明が欲しい」

 そんな風に言わせてるのは全て、私がはっきりしないから。

 お試しなんて少し抵抗はあるけど、一之瀬もそれを望むのなら、私は――。
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