傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
「……分かった、それじゃあ、その間に、きちんと考えて……答え、出すね」

 一之瀬の申し出を受ける事にした私は仮だけど、きちんと向き合う為に付き合う事を決めた。

「ああ、それでいい」

 そして、私の答えに満足そうな表情を浮かべた一之瀬は再び力強く抱き締めてくれる。

「い、痛いよ……」
「悪ぃ……スゲェ、嬉しくてさ」
「ううん、謝らないで……」

 力が強過ぎて少し痛かったけど、別に嫌だった訳じゃない。

 こんなにも想ってくれる事、お試しなのに、私と付き合う事が嬉しいと喜んでくれる……それには私も嬉しかったから。

「陽葵……」
「……ッん……」

 抱き締められていた腕が離れていくのと同時に名前を呼ばれて向い合う形になったのも束の間、そのまま唇と唇が重なり合った。

 啄むような優しいキスが何度も何度も降ってきて、それだけで私の身体は再び熱を帯び始めていく。

(一之瀬となら、きっと……上手くいく……これまでみたいに、すぐに駄目になったり……しないよね)

 ずっと、夢見てた。

 私だけを愛してくれて、ずっと好きでいてくれて、一生をかけて、私を幸せにしてくれる人に出逢う事を。

 それが一之瀬なのかもしれない。

 そうであれば嬉しいし――そうであって欲しい。

「陽葵?」
「……もっと、強く……抱きしめて?」

 こんな事、普段なら言わない。

 これまでの彼氏にも、言った事ない。

「そんな可愛い事言われると、止めらんなくなるんだけど」
「…………いいよ、止めなくて」
「――そういう事、元カレ(これまでの男)にも言ってきたのかと思うと、マジで嫉妬する」
「――ッんん」

 よくよく考えてみれば、私はこれまでの元カレたちに、自分の中にある『好き』という気持ちを出し切れていなかった気がした。

 勿論『好き』だから付き合ったし、自分的には伝えていたつもりだったけれど、伝えきれていなかったのかもしれない。

 だから、私から気持ちが離れて浮気されて、捨てられたのかもしれない。

 それに気付けたなら、後は簡単。

 一之瀬とは駄目になりたくないから、『好き』の気持ちを沢山伝えればいいんだ。

「今日は流石にするつもりは無かったんだけど、もう無理。陽葵のせい、だからな?」

 言いながらネクタイに手をかけた一之瀬はそれを器用に外し、着ていたYシャツをも脱ぎ捨てていく。

 そんな光景を目の当たりにしながらドキドキと鼓動が音を立てる中、上半身裸になった彼は私の衣服に手をかけ、優しく脱がせてくる。

 今日はもう、勢いじゃない。

 お試しだけど今は恋人同士だから、お互いしたいって思うからする。

 そんな背徳感の無い行為に、私たちは溺れていくのだった。
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