傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
「あ、あの……私……」

 まさか、そこまで一之瀬が落ち込むなんて思わなかった私は焦る。

 名前で呼ばないのを指摘されたけど、これについては本当、無意識というか何ていうか……私はこれまでの彼氏の事もすぐに名前で呼ぶ事が出来なくて徐々にという感じだったから今回も慣れたらで大丈夫かなって思ってたけど、どうやら一之瀬はそれも不安に思ってしまうらしい。

 ただ名前で呼ぶのが恥ずかしいだけで、嫌いだからとかそういう理由からでは無いのだけど、そんなの言わなきゃ伝わらないだろうと反省した。

「ごめんね、丞……、私、名前で呼ぶのって、なかなか出来なくて……それで不安にさせたのは本当にごめん……」

 目の前ですごく落ち込む一之瀬の姿を目の当たりにした私は胸が締め付けられるくらいに苦しくなって、どうしたら分かってもらえるのかを必死に考えながら彼に近付いて行き――

「私も、丞の事、大好きだよ……。ただ、丞の好きな気持ちが大き過ぎて、これまでそんな風に好きになられた事が無かったから、ちょっと、戸惑っちゃって……。だけど、それは嫌じゃない。丞の事は本当に好きなの。それは信じて欲しい」

 落ち込む一之瀬を後ろから包み込むように抱き締めて、今の私の中にある素直な想いを口にした。

「……それ、本当? 俺だけが好きな訳じゃなくて、陽葵も俺の事、ちゃんと好き?」
「うん、好きだよ。好きじゃなかったら、部屋に入れたりしない……抱き合ったり、キスだって……しない」

 一之瀬の中から不安を無くすには、きちんと想いを伝えなきゃ。

 きっと、正式に付き合おうと一言言えば、一之瀬にとってそれが一番安心出来る言葉なのだという事は理解している。

 でも、それはまだ少しだけ早い気がして、どうしても言えなかった。

 今の私の精一杯の想いを聞いてくれた一之瀬は一旦私から離れてこちらへ向き直ると、

「……分かった。信じる。俺も少し嫉妬剥き出しにし過ぎたところは子供(ガキ)だったと思うし、それでお前を困らせたのも反省する。けど、それだけ陽葵が好きって事だから」
「うん、分かってる」

 未だ拗ねた表情をしたままの一之瀬が私の事を抱き締めてくれたので、私も彼の背に手を回して、負けないくらいにギュッと抱き締めながら頷いた。
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