天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
村を歩いていても、罵詈雑言や石まで投げられる始末である。

 俺を慕う武官たちは、無礼極まりない村民の行動に怒り心頭だった。しかし、攻撃してはならないと俺が言ったので、ただ耐えるほかなかった。

 武官たちの精神疲労はどんどん蓄積していった。

「誰のために尸鬼を対峙しに行こうとしているのか、あいつらは全然わかってねぇな」

 野営地を作り終え、焚火に川魚を串に刺しながら男は言った。

 皇帝相手に軽率な口の利き方をしているこの男の名は雄珀(ゆうはく)。

 鎧の上からでもわかる鍛え上げられた長身と、赤茶色のごわついた長髪。野性的な雰囲気の中に精悍な面立ちと気さくな笑顔で女性に大変人気があるらしい。こんな粗悪な奴がなぜ人気なのかは俺にはわからない。

ただ、腕っぷしの強さは確かだ。二十代という若さで禁軍の右龍武軍(うりゅうぶぐん)で将軍を務めているやり手でもある。

 元は山賊の長で、俺と出会い臣下になった。俺の初めての臣下であり、もっとも信頼を寄せている男だ。
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