パティシエ総長さんとコミュ障女子

はぁ、今日も進展なしかぁ……。

私は上手く喋ることはできない。
だけどその分、人の話を聞く能力は発達してしまっていると思う。

ただ、「相談に乗る」という意味での「話を聞く」ではない。
どちらかというと「盗み聞き」のニュアンスが強い。

自分の席に座って耳をすませば、教室にいる人たちの一通りの会話を聞き分けることができる。
随分と変な能力を手に入れてしまったものだ。

私は苦笑しながら足を進める。
いつも見ている下校ルートだ。

今日聞いた会話をぼんやり歩きながらつらつらと思い出した。


「双竜会の総長がまた一つグループ潰したらしいぜ」

「双竜会の総長さん、めっちゃカッコよかった!」

「双竜会の人怖すぎ……」

「双竜会の人にあったら殺されちゃうらしいよ…!」

「双竜会は裏社会ほぼ牛耳っているとか」

「俺の友達が双竜会の奴に半殺しにされてさぁ……」

「双竜会、高校生の集まりのくせに怖すぎ」


………おかしい
最近、クラスが「双竜会」のことについてもちきりだ。

双竜会というのは…と私が説明するのも変だが、人の会話から「聞いた」話によると、ここら辺の地域を牛耳っている不良グループらしい。
御神楽竜司という総長率いる大きなグループ。
今はその総長がすごく知名度を上げているのだそう。

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