君がくれた涙はきっと光となる
そこには私のことを写した写真で埋め尽くされていて、だから最後の一枚だけが浮いて見えた。



「これ…」



––––– そこには雨上がりの空にはっきりと浮かぶ綺麗な七色の虹が。



颯汰さんが言っていた言葉を思い出す。



青空の下で七色に輝く一本の虹が、あの日の光景を鮮明に表していた。


颯汰さんも見ていたあの景色を、お兄ちゃんも同じように見ていたんだ…。



「じゃあ…この写真を撮っていたからお兄ちゃんは前から来ていた車に気づかずに飛び出しちゃったってこと…?」


「そうなるんじゃねぇかな」



…なぜか、少しだけ納得がいかなかった。


なんとも言えない違和感が胸の中に渦巻いていて、表情にも出ていたのか流川くんが「どうした?」と聞いてきた。



「あ、いや…お兄ちゃんが風景とか撮るの珍しいな…って思って。いつも綺麗な夕焼けとか花とか、そういうのがあっても撮るタイプじゃなかったから、この虹はよっぽど残しておきたかったのが不思議というか…」


「んー…それほど綺麗だったんじゃない?」



流川くんに曖昧に返事を返しながら、お兄ちゃんが最後に撮った虹の写真をもう一度眺める。


たしかに幻想的でとても綺麗だ。



モヤモヤとした気持ちを残したまま、お兄ちゃんの死の真相は事故だったと幕を閉じた。
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