新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜
「あれってさ。 確かに、 不祥事なわけだから、 悪い事が公になって謝罪するわけじゃない? だからご迷惑な話だなとは思ったりもするわけ。 でも……ご心配? ご心配って……そんな事、 冷たいようだけど当事者とその関係者以外は、 誰も心配なんかしてないんだよ。 悪い事した奴らのことなんて、 誰も心配なんかしていない。 ただ、 迷惑な話ってだけでさ。 俺、 いつもそこの場面、 心の中で突っ込んでる。 誰も心配なんてしてないから。 迷惑なだけ……とね」
「話は、 それだけか?」
「えっ? あ、ああ。 まあ、 そんなところ」
はい?
明良さん。 何を言いたかったんだろう?
「単なる時間稼ぎなら、 とっとと消えろ。 どうせ、 交代の時間で病棟戻りづらいんだろ? それこそ、 迷惑な話だ」
そう言って、 高橋さんは明良さんを蹴るふりをした。
時間稼ぎって……。
「ハイハイ。 何とでも言ってくれ。 それじゃ、 陽子ちゃん。 色んな意味で、 お大事にね」
「明良さん……。 ありがとうございました」
「お前。 こんなエロ医者なんかに、 お礼を言う必要ないぞ」
すると、 明良さんは手を振った。
「No Problemよん。 それより、 陽子ちゃん。 襲われないように、 気を付けてねぇ」
「あ、 明良さん。 な、 何言って……」
「じゃあな。 貴博」
「ああ……」
「なんだか……貴博にストレートに表現されると、 面食らって気持ち悪いな……そもそも、 何で俺が怒られなきゃいけないんだよ。 此処、 俺の勤務先だよな……」
明良さんは、 ブツブツ言いながら病室を出て行き、 高橋さんも素っ気ない態度だったけれど、 きっと何も言わなくてもお互いわかっているんだと思う。 心の内をわかりきっているからこそ出来る、 2人の会話。 何だか、 益々素敵な関係に見えて羨ましく思えた。
「はぁ……」
高橋さんが大きな溜息をつきながら私を見ると、 そっと掛け布団を掛け直してくれながら、 まだ僅かに頬を伝っていた涙滴を拭ってくれたので、 その動作に無意識に目を閉じた。
「大丈夫か?」
駄目だ。 せっかく止まりかけた涙が、 まだ先ほどの高橋さんとミサさんとの会話や、 ミサさんと御主人とのやりとりが思い出されて喉の奥が苦しくなってしまった。
「話は、 それだけか?」
「えっ? あ、ああ。 まあ、 そんなところ」
はい?
明良さん。 何を言いたかったんだろう?
「単なる時間稼ぎなら、 とっとと消えろ。 どうせ、 交代の時間で病棟戻りづらいんだろ? それこそ、 迷惑な話だ」
そう言って、 高橋さんは明良さんを蹴るふりをした。
時間稼ぎって……。
「ハイハイ。 何とでも言ってくれ。 それじゃ、 陽子ちゃん。 色んな意味で、 お大事にね」
「明良さん……。 ありがとうございました」
「お前。 こんなエロ医者なんかに、 お礼を言う必要ないぞ」
すると、 明良さんは手を振った。
「No Problemよん。 それより、 陽子ちゃん。 襲われないように、 気を付けてねぇ」
「あ、 明良さん。 な、 何言って……」
「じゃあな。 貴博」
「ああ……」
「なんだか……貴博にストレートに表現されると、 面食らって気持ち悪いな……そもそも、 何で俺が怒られなきゃいけないんだよ。 此処、 俺の勤務先だよな……」
明良さんは、 ブツブツ言いながら病室を出て行き、 高橋さんも素っ気ない態度だったけれど、 きっと何も言わなくてもお互いわかっているんだと思う。 心の内をわかりきっているからこそ出来る、 2人の会話。 何だか、 益々素敵な関係に見えて羨ましく思えた。
「はぁ……」
高橋さんが大きな溜息をつきながら私を見ると、 そっと掛け布団を掛け直してくれながら、 まだ僅かに頬を伝っていた涙滴を拭ってくれたので、 その動作に無意識に目を閉じた。
「大丈夫か?」
駄目だ。 せっかく止まりかけた涙が、 まだ先ほどの高橋さんとミサさんとの会話や、 ミサさんと御主人とのやりとりが思い出されて喉の奥が苦しくなってしまった。