新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜
「そんなぁ。 教えて下さい。 高橋さん」
「どうしようかなぁ? お前が頑張って、 もう少し良くなったら教えてやるよ」
「ケチンボ……」
小さい声で言ったつもりが、 聞こえていたらしい。
「だって俺、 ケチケチ貴ちゃんだもん」
ケチケチ貴ちゃんって……何それ?
思わず呆れ顔で、 高橋さんを見上げた。
エッ……。
高橋さんが、 乱れた私の前髪を掻き分けてくれる。 そして、 無意識にまた目を瞑ってしまう。 そんな私の頬に、 高橋さんは静かに触れるか触れないかぐらいのキスをした。
驚いて真上にいる高橋さんを見上げると、 何故か高橋さんはサッと目を逸らしてしまった。
どうしたんだろう?
少しだけ不安な気持ちになりながら、 高橋さんをジッと見ていた。
「フッ……。 これじゃ、 エロ医者の事言えないな」
「高橋さん?」
そして、 また直ぐ視線を戻すと右手で私の左頬に触れた。
「お前だけは、 巻き込みたくなかった。 それなのに、 こんな事になってしまって」
「高橋さん……」
そう言うと、 高橋さんは哀しそうな瞳をしながら、 私の頬を伝い出した涙を拭ってくれている。
「本当に、 申し訳ないと思っている」
黙って首を横に振っていると、 高橋さんが両手で私の頬を包み込んだ。
「高橋さん。 私は……」
ん? というような表情を浮かべて、 高橋さんが小首を傾げながらこちらを見た。
「私の知らない高橋さんの昔を知る事が……少しでも出来たから。 だから……」
本当は、 そんな軽い問題ではない。 でも今の高橋さんにとって、 私のこの状態は……。 本来、 倒れたのも私自身がいけなかったから、 こんな事になってしまったのに。 高橋さんのことだから、 きっと自分のせいだと思ってしまっているかもしれない。 だとしたら……ほんの僅かながらも好奇心と野次馬根性的な部分も、 自分自身にあったことも事実。 結果として、 高橋さんとミサさんのとても辛い過去を知る事になってしまった。 それでも、 高橋さんの気持ちを少しでも軽くしてあげたいという、 おこがましさから出た言葉だった。
「どうしようかなぁ? お前が頑張って、 もう少し良くなったら教えてやるよ」
「ケチンボ……」
小さい声で言ったつもりが、 聞こえていたらしい。
「だって俺、 ケチケチ貴ちゃんだもん」
ケチケチ貴ちゃんって……何それ?
思わず呆れ顔で、 高橋さんを見上げた。
エッ……。
高橋さんが、 乱れた私の前髪を掻き分けてくれる。 そして、 無意識にまた目を瞑ってしまう。 そんな私の頬に、 高橋さんは静かに触れるか触れないかぐらいのキスをした。
驚いて真上にいる高橋さんを見上げると、 何故か高橋さんはサッと目を逸らしてしまった。
どうしたんだろう?
少しだけ不安な気持ちになりながら、 高橋さんをジッと見ていた。
「フッ……。 これじゃ、 エロ医者の事言えないな」
「高橋さん?」
そして、 また直ぐ視線を戻すと右手で私の左頬に触れた。
「お前だけは、 巻き込みたくなかった。 それなのに、 こんな事になってしまって」
「高橋さん……」
そう言うと、 高橋さんは哀しそうな瞳をしながら、 私の頬を伝い出した涙を拭ってくれている。
「本当に、 申し訳ないと思っている」
黙って首を横に振っていると、 高橋さんが両手で私の頬を包み込んだ。
「高橋さん。 私は……」
ん? というような表情を浮かべて、 高橋さんが小首を傾げながらこちらを見た。
「私の知らない高橋さんの昔を知る事が……少しでも出来たから。 だから……」
本当は、 そんな軽い問題ではない。 でも今の高橋さんにとって、 私のこの状態は……。 本来、 倒れたのも私自身がいけなかったから、 こんな事になってしまったのに。 高橋さんのことだから、 きっと自分のせいだと思ってしまっているかもしれない。 だとしたら……ほんの僅かながらも好奇心と野次馬根性的な部分も、 自分自身にあったことも事実。 結果として、 高橋さんとミサさんのとても辛い過去を知る事になってしまった。 それでも、 高橋さんの気持ちを少しでも軽くしてあげたいという、 おこがましさから出た言葉だった。