新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜
「その会計士の立場から、 敢えて今回言わせてもらった形だ」
「何をですか?」
「各支社が誤差のないよう、 経理上の事を纏め本社に送ってきたところで、 1番金を稼げないその本丸の本社が転けていては、 何もならないということだ」
「高橋さんは、 俺には無理だと言いたいんですか? 仮にも、 俺だって税理士の免許は持っています。 他の人に比べたら……」
「そこだよ」
「えっ?」
「今回、 本社会計の後任にと、 坂本に白羽の矢が立ったのは、 税理士というライセンスを持っているからだった。 経理の経験があるという事を、 加味した人事だったと、 俺も思っている。 本当の詳細は、 俺にも定かではないが、 多分そうだろう」
「……」
「だが、 税理士のライセンスを持っているというだけでは、 会社組織は成り立たない。マネージメントが出来て、 部下のフォロー等が出来なければ、 上司としても上に立つ物としての器じゃない」
高橋さんの淡々と続く言葉に、 坂本さんはただ黙って睨みつけている。
「意思の疎通も図れず、 管理職としての機能を果たせないとすれば、 部署としてなりたたない上、 結果的に会社全体の責務になってしまう。 扱っているものが、 とてもケアの必要なものであればあるほど、 それだけリスクも伴ってくる。 そうなった時、 借りに何かあった時に、 部下より先に坂本が帰ってしまっていては、 どうする事も出来ないだろう? そして、 仕事の内容等がわからないまま、 ただ指示をするだけだったら、 組織として歪みが生まれ、 崩壊する。 そんなリスクを背負うことが分かっていながら、 俺は我が社の会計をお前に任せる事は出来ないし、 俺自身も決算を締める自信がない」
「会計は、 クビという事ですか?」
坂本さんの声が、 幾分トーンダウンしたように感じた。
「そうではない。 お前は、 早くから海外に行って培ってきたものもある。 それなりに苦労もあって、 大変だった事も認める。 が……しかし、 欠如している部分もある事は否めない。 だとすると、 せっかくのライセンスを発揮出来る機会を逸してしまう。 これからの人材として、 そして会社の期待を込めてという意味も踏まえ、敢えて俺の下に付けた」
エッ……。
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