奮闘記などと呼ばない (王道外れた異世界転生)
* Д.б 無理でしょ *
「お父さま、少し、お話があります。お時間をいただけますか?」
当座の目的と、遂行しなければならない課題が明確になり、『セシル』 としての覚悟も決まり、次に起こす行動は決まっていた。
まず、味方を増やすこと。
婚約解消をさせ、それでも、一家の没落なんていう結末にはさせず、完膚なきまでにあのクソガキを叩き潰すには、『セシル』 に力を貸してくれる味方が必要なのだ。
信頼できる味方をつけ、手駒を増やし、決戦に向けて、自分の切れる持ち札(カード) を増やすことが最優先なのだ。
その第一として、実の父親であるリチャードソンは、どうしても、『セシル』 の味方に引き入れておかないといけない重要人物だった。
これからセシルが計画している策略を実行する為には、スポンサーが必要だ。大人の頭脳を持ち合わせていようと、子供である『セシル』 にできることは限度がある。
だから、伯爵家当主である父親のサポートが、この作戦には、なくてはならない重要な鍵となる。
『セシル』 と『ヘルバート伯爵家』 の将来は、まず、リチャードソンの協力が得られるか得られないかで決まってしまうのではないか、というほどに、重要案件なのだ。
そして、『セシル』 の記憶にある、優しくて大好きな父親を傷つけたくないし、これからセシルが動くことによって、一番に影響を受けてしまうのは、父親であるリチャードソンである。
ヘルバート伯爵家の存亡問題が懸かっているだけに、当主であるリチャードソンは、セシルがこれからしようとしている作戦も、策略も、その全てを知っていなければならないからだ。
「どうしたんだい、セシル? そんな難しい顔をして。なにか困ったことがあったのかい?」
執務室にやってきた幼い娘を見て、リチャードソンが心配そうな顔を浮かべ、すぐに椅子から立ち上がっていた。
セシルの手を引いて、執務室にある接客用なのか、長椅子に座らせる。その隣に、リチャードソンが座った。
その物腰も柔らかで、優し気な雰囲気を醸し出す容姿や外見に加え、落ち着いた品のある男性だ。
ジーっと、隣に座っている父親を見上げ観察しているセシルの前で、リチャードソンはとても優し気な微笑みを浮かべていく。
その仕草も、セシルに触れる動作も、その全てが全て、セシルが愛おしくて堪らない、といった愛情が深く、心からの愛情が溢れている。
その顔を見て、やはり、『セシル』 はこの父親を味方につけなければならない、と強く思う。
この混乱した一週間、今の結末に落ち着くまで、感情も精神もグチャグチャだった。それでも、そんな中でも、『セシル』 は一度として、観察することを止めなかった。
前世(なのか現世) の癖で、自分は、昔から、ジーっと、物事や人を観察するのが癖なのだ。得意なのだ。
もう、無意識で出て来るほどの習慣で、考えもせずにできることだった。
そうやって観察していると、なぜか、すぐに問題点などが出て来ることがあって、問題点を見つけるのも得意である。
大抵、問題が明確に分かっているのに、なんで解決しないのだろう――などと、よく思う時があったほどだ。
この父であるリチャードソンの深い愛情を前にして、『セシル』 はいつでも心満たされている気持ちを知っている。
だから、『セシル』 の体で前世の自分自身の記憶が蘇ってきても、これからこの父親と暮らしていくうちに、きっと、この『セシル』 となった自分自身も、この父親を愛していけるだろうと、そんな予感がしたのだ。
こんな――狂ったような状況で、先の見通しもなく、絶望しそうになりそうでも、だからと言って、誰かを愛さず、一人きりでなど生きていけるはずもない。
それなら、今いるこの家族を、もう一度知って行って、そして、愛していけるはずだ。
たぶん、「家族」 になれるはずだ。
「どうしたんだい、セシル? なにか、困ったことがあったのかな?」
「いいえ、お父さま。ただ……今日は、お父さまに大事なお話があってきました」
「なんだい?」
「お父さま、私は、あの侯爵家の息子との婚約を、必ず解消します」
「――…………えっ……?」
『セシル』 が口に出した一言が全く理解できていないかのように、長い間が降りて、それで、リチャードソンが驚きで、その一言を漏らしていた。
「……えっ……と、セシル、一体、なにを……」
ものすごい混乱しているのか、目をパタパタと瞬かせている父親に向き直り、『セシル』 は父の手を取った。
「お父さま、この婚約、絶対に解消します」
「解消……って、それは、無理が……」
相手は侯爵家だ。伯爵家程度の者が口答えすることなど許されない。
「お父さま、今からお話することは、あまりにキチガイじみていて、現実離れしていて、私が狂ってしまったかもしれない、と思われるかもしれませんが、私がお話することは全て事実です。お父さまだけには、この事実を明かしておきます」
「セシル……、一体、なにを……」
突然の幼い娘の豹変に、リチャードソンもどう反応して良いのか、更に困惑を極めている。
ギュッと、一応、その父を安心させるように、『セシル』 は強く父の手を握りしめる。
「私は、前世の記憶を持っています」
当座の目的と、遂行しなければならない課題が明確になり、『セシル』 としての覚悟も決まり、次に起こす行動は決まっていた。
まず、味方を増やすこと。
婚約解消をさせ、それでも、一家の没落なんていう結末にはさせず、完膚なきまでにあのクソガキを叩き潰すには、『セシル』 に力を貸してくれる味方が必要なのだ。
信頼できる味方をつけ、手駒を増やし、決戦に向けて、自分の切れる持ち札(カード) を増やすことが最優先なのだ。
その第一として、実の父親であるリチャードソンは、どうしても、『セシル』 の味方に引き入れておかないといけない重要人物だった。
これからセシルが計画している策略を実行する為には、スポンサーが必要だ。大人の頭脳を持ち合わせていようと、子供である『セシル』 にできることは限度がある。
だから、伯爵家当主である父親のサポートが、この作戦には、なくてはならない重要な鍵となる。
『セシル』 と『ヘルバート伯爵家』 の将来は、まず、リチャードソンの協力が得られるか得られないかで決まってしまうのではないか、というほどに、重要案件なのだ。
そして、『セシル』 の記憶にある、優しくて大好きな父親を傷つけたくないし、これからセシルが動くことによって、一番に影響を受けてしまうのは、父親であるリチャードソンである。
ヘルバート伯爵家の存亡問題が懸かっているだけに、当主であるリチャードソンは、セシルがこれからしようとしている作戦も、策略も、その全てを知っていなければならないからだ。
「どうしたんだい、セシル? そんな難しい顔をして。なにか困ったことがあったのかい?」
執務室にやってきた幼い娘を見て、リチャードソンが心配そうな顔を浮かべ、すぐに椅子から立ち上がっていた。
セシルの手を引いて、執務室にある接客用なのか、長椅子に座らせる。その隣に、リチャードソンが座った。
その物腰も柔らかで、優し気な雰囲気を醸し出す容姿や外見に加え、落ち着いた品のある男性だ。
ジーっと、隣に座っている父親を見上げ観察しているセシルの前で、リチャードソンはとても優し気な微笑みを浮かべていく。
その仕草も、セシルに触れる動作も、その全てが全て、セシルが愛おしくて堪らない、といった愛情が深く、心からの愛情が溢れている。
その顔を見て、やはり、『セシル』 はこの父親を味方につけなければならない、と強く思う。
この混乱した一週間、今の結末に落ち着くまで、感情も精神もグチャグチャだった。それでも、そんな中でも、『セシル』 は一度として、観察することを止めなかった。
前世(なのか現世) の癖で、自分は、昔から、ジーっと、物事や人を観察するのが癖なのだ。得意なのだ。
もう、無意識で出て来るほどの習慣で、考えもせずにできることだった。
そうやって観察していると、なぜか、すぐに問題点などが出て来ることがあって、問題点を見つけるのも得意である。
大抵、問題が明確に分かっているのに、なんで解決しないのだろう――などと、よく思う時があったほどだ。
この父であるリチャードソンの深い愛情を前にして、『セシル』 はいつでも心満たされている気持ちを知っている。
だから、『セシル』 の体で前世の自分自身の記憶が蘇ってきても、これからこの父親と暮らしていくうちに、きっと、この『セシル』 となった自分自身も、この父親を愛していけるだろうと、そんな予感がしたのだ。
こんな――狂ったような状況で、先の見通しもなく、絶望しそうになりそうでも、だからと言って、誰かを愛さず、一人きりでなど生きていけるはずもない。
それなら、今いるこの家族を、もう一度知って行って、そして、愛していけるはずだ。
たぶん、「家族」 になれるはずだ。
「どうしたんだい、セシル? なにか、困ったことがあったのかな?」
「いいえ、お父さま。ただ……今日は、お父さまに大事なお話があってきました」
「なんだい?」
「お父さま、私は、あの侯爵家の息子との婚約を、必ず解消します」
「――…………えっ……?」
『セシル』 が口に出した一言が全く理解できていないかのように、長い間が降りて、それで、リチャードソンが驚きで、その一言を漏らしていた。
「……えっ……と、セシル、一体、なにを……」
ものすごい混乱しているのか、目をパタパタと瞬かせている父親に向き直り、『セシル』 は父の手を取った。
「お父さま、この婚約、絶対に解消します」
「解消……って、それは、無理が……」
相手は侯爵家だ。伯爵家程度の者が口答えすることなど許されない。
「お父さま、今からお話することは、あまりにキチガイじみていて、現実離れしていて、私が狂ってしまったかもしれない、と思われるかもしれませんが、私がお話することは全て事実です。お父さまだけには、この事実を明かしておきます」
「セシル……、一体、なにを……」
突然の幼い娘の豹変に、リチャードソンもどう反応して良いのか、更に困惑を極めている。
ギュッと、一応、その父を安心させるように、『セシル』 は強く父の手を握りしめる。
「私は、前世の記憶を持っています」