愛を語るより…
そんな事を思いながら、どんどん勢いを付けて約束の場所まで急ぐ。

如何しても、この感覚を早く確かめたくて、白い息を吐きながら、何時の間にか早まった足元。


待ち合わせの場所は、あの煌びやかな電飾を施された木の前。


視界に映るその場所には、何人か、既に待ち合わせをしている人、無事に落ち合って幸せそうに手を繋いでる人達がいる。


私もその中に紛れようとして、一歩足を進めた瞬間。


「佐伯さん」


と、後ろから手を引かれた。
突然の事に驚いた後、ゆっくりと振り返ると其処には、私が会いたかった人がいて…。


「桐島主任!?」


驚いて、思わず少し大きめの声を出した私。
まだ待ち合わせの時間には早過ぎる程なのに、どれくらい早く来ていたのか、主任はにっこりと微笑んで、そのまま私の手の平をするり、と掴む。

優しく、柔らかく。


「そんなに早く来なくても、まだ時間はあるのに…予定とか準備とか大丈夫だった?」


にぎにぎと、手袋の上から手を繋がれて、私の顔はまた熱くなる。


こんなに周りは寒いというのに…。


「だ、大丈夫、です。というか、桐島主任の方がその…大丈夫でしたか?もしかして待たせてしまいましたか?」


そうちょっと困ったように、背の高い彼を見上げるようにして、伺うと主任は口元に手を当てた後、ううん、と一呼吸置いてから、私の事を真っ直ぐに見つめ返して、こう告げてくる。


「佐伯さんとこの日を過ごせるのが嬉し過ぎて、ちょっとだけ頑張っちゃったかな」


ぱちん


そう言いながらウィンクをしてくる桐島主任にくらくらと目眩がしそうだ。
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