君と二度目の恋に落ちたら
この日、教室にたどり着くとクラスメイトが教卓のあたりで集まっていた。そして、その中の1人が私の到着に気が付き、「平松さん!脚本が出来上がったんだって!」と言って、私を手招きした。

私は鞄を持ったまま、その人だかりのそばへ寄った。すると脚本担当の文芸部の子が私に脚本を手渡してくれた。

「ちょうど今日から文化祭の準備に時間をもらえるようになるから、それに間に合わせられてよかった!もし、何か気が付いたことがあったら遠慮なく教えてね!」

「ありがとう。脚本書くの大変だったでしょう、本当にお疲れ様」

文芸部の子はとても満足そうな笑顔を見せた。

私は自分の席に着き、さっそく脚本を読んだ。出だしはシンデレラのストーリー通りだと思ったが、すぐにこれがシンデレラを基にしたオリジナルの脚本の顔を見せた。

気になっていた宇宙人や宇宙警察隊はどうやって登場するのだろうと思っていたが、なるほど、こう来たか…と思いながら、脚本を読み進めた。

読み終えて、面白い話だったと思ったが、シンデレラのセリフはやはり多く、覚えられるだろうかと不安を感じた。

しかし、脚本を頑張って書いてくれたので、もちろん頑張らないわけにはいかない。腹を括ってシンデレラの役を全うしようと決心した。


そして、その日の6限目の授業が文化祭の準備の時間に変更になることになっていたので、今日はそれぞれの持ち場で分かれて作業をすることになった。大道具や小道具、照明の子たちはどんな風に準備するかを話し合い、私たち役者組は本読みをした。

「平松さんは声可愛いし、読むのも上手いから、自信を持ってもっと声量上げてね」

「は、はい!」

脚本担当の子が全体の指揮官役も担っているので、本読みを通してそれぞれの役者に助言をくれた。一度最後まで脚本を読み上げると、その子は次は裏方組のもとへ駆け寄った。

主役という重役を任されたが、脚本も書いて全体を見るなんて、クラスで一番大変なのはきっと彼女に間違いない。
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