君と二度目の恋に落ちたら
そして、その日から夏休みまでの約2週間、放課後と月曜日と木曜日の6限目が文化祭の準備の時間になった。夏休みに入ってからは話し合いで決まった日に学校に集まって準備を進めることになっている。

私は家に帰ってからも、宿題の合間に脚本を読み、一生懸命セリフを覚えた。覚えることはセリフだけでなく、立ち位置や動きなどもあるので、私の頭はパンクしそうだった。

そんな大変な日々の中、癒しとなったのはやっぱり前野くんとの時間だった。

私たちはお互い探り合いながら、月水金曜日に自販機に来るようになっていた。本当は毎日来たいところだったが、毎日自販機で飲み物を買うのはお小遣いのやりくりが厳しかったため、段々と相手の様子を見て、約束はしていないが月水金曜日に行くようにしたのだった。

最近の会話の話題は専ら文化祭のことだった。お互いの劇の内容はネタバレにならないように触れなかったが、練習中にどんなことがあったなどの話をしていた。


そして、もう数日で夏休みに突入するという水曜日のこと。

「平松さんのところは夏休みの間、いつが練習日なんですか?」

前野くんにそう問われて、私はスマホのスケジュールに入れた練習日の日程を教えた。すると、前野くんもスマホを取り出し、何かを確認する動作を見せてこう言った。

「この期間は練習日、うちのクラスと被ってますね」

前野くんもスマホのスケジュールに自分のクラスの練習日を入れていたらしく、その画面を私に見せてくれた。

「あ、本当だ」

前野くんはボソッと「この時、休憩時間も被らないかな…」と呟いた。

きっと夏休みの間もこうやって会おうとしてくれているのだと、前野くんの言葉の意味を感じ取った私は顔が熱くなるのがわかった。

「休憩時間は…わかんないけど、練習終わりにここに来ようかな…」

前野くんは視線をそらし、自分の頬を少し掻きながら「自分も、来ていいですか?」と聞いてきたので、私は小さく頷いた。
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