君と二度目の恋に落ちたら
私は目の前にいる父の方を見た。父もまた、私の方を真っ直ぐ見ていた。

先ほどの「ゆりあはずっとここにいるんだ」という父の言葉を思い返し、私の夢の中にいるこの父には父の意識があるのではないかと思い至った。

そのことについて言及しようと「ねえ」と口を開きかけたが、父の方が先に話し始めた。

「ゆりあはもう気づいてしまったか…ここが現実世界じゃないってことを…」

「うん…」

私たち親子の会話を前野くんは黙って見守ってくれていた。

「ここにいるお父さんは…自分が事故で亡くなったってことをわかってるの…？」

「…ああ、ちゃんとわかってる…。お父さんはな、死んでからもずっとゆりあとお母さんを見ていたよ」

父の顔が悔しそうに歪む。

「俺がいなくなったせいで、苦しむ2人の姿を見ているのは辛かった…。なんで俺が死ななきゃならなかったんだ。俺はずっと2人を幸せにしていたかったのにっ…」

私は事故を起こしたトラック運転手やその人の会社を恨んでいたが、命を奪われた当の本人である父の悔しく思う気持ちは推し量り切れないものだろう。

「…あの日、ゆりあが海に落ちてしまった時も…お父さんはゆりあのそばにいたんだよ。ゆりあを助けようと手を伸ばした…だけど、俺はゆりあの手を掴むことすらできなかったんだ…」

父は自分の手のひらを震わせながら見ていた。

あの時、お父さんは私を助けようとしてくれたんだ…。きっとお父さんなら手を掴み損ねても、海に飛び込んで私を助けようとしてくれただろう。だけど、幽体となってしまったお父さんはどんなに助けようと強い気持ちがあっても、私の体に触れることはできないのだ。
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