彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)





私が受け取ると、もう1缶のノンアルコールビールの口を開ける好きな人。
そして口づけて、グイっと飲む瑞希お兄ちゃん。







(良い飲みっぷりの瑞希お兄ちゃんも好きだわ・・・・・♪)







見惚れていれば、ノンアルコールビールから口を放した瑞希お兄ちゃんが言った。







「・・・聞いたか?」
「え!?なにをです?」
「・・・『種馬』から、俺の母親のことを聞いたか?」
「たねうま?」
「檜扇二三人のことだ。」
「あ・・・!?」







私にそう聞いてくる姿は、儚いけど色っぽかった。
2つの意味でドキドキしながら、言葉を選びながら私は答えた。







「き・・・聞きました。」
「なんて?」
「え!?えーと・・・・・瑞希お兄ちゃんのお母様は、瑞希お兄ちゃんを出産したことを話してました。」
「そうじゃねぇ!!!ハッキリ言え!!クソ野郎は俺のおふくろを、愛人扱いしやがっただろう!!?」
「えっ!?」

(違うの!?)

なんて答えていいのかわからない。

(なんて言えば、瑞希お兄ちゃんが傷つかないで済むの!?)







両手で缶を握り締め、固まるしかない私。
瑞希お兄ちゃんは、そんな私のアゴをつかむと、自分の方を向かせながら言った。







「クソ野郎は、俺のおふくろのことをなんて言ってた!!?」
「あ、あの・・・!」
「なんて言ってたんだ!!?愛人だっていう以外にも、悪く言ったんだろう!!?」
「その・・・!」
「ごにょごにょ言ってねぇーではっきり言いやがれ!!胸糞わりぃ!!」

ベキベキ!!







目の前で握りつぶされる、瑞希お兄ちゃんが飲んでいたノンアルコールビールの缶。
中が空っぽだったみたいで、布団を汚すことはなかった。
だけど、瑞希お兄ちゃんの顔はひどくゆがんでいた。
今にも泣きそうな顔になっていた。







「クソッたれが!!!」

ベコン!!







つぶれた感を床にたたきつける瑞希お兄ちゃん。







「ご、ごめんなさい!!」







どうしていいかわからず謝れば、瑞希お兄ちゃんの目の色が変わる。







「―――――――わりぃ、凛。」







うつむきながらつぶやくと、ギュッと私を抱きしめる瑞希お兄ちゃん。







「あ!?」







その振動で、缶の中身をこぼしかけたけど、なんとか持ちこたえる。









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