無自覚なまま、愛を蓄えて。

思わずぎゅっと目をつぶったけど、声の主を思い出してまた目を開けた。


目の前にいるのは……やっぱり、早乙女くん。


早乙女くんはにやりと不気味な笑顔を浮かべ、私を見ている。その笑顔を見てゾクッと背中に寒気が走り、あの日のことを思い出した。


あの日も確かこんなふうに不気味な笑顔で私を見ていた。


忘れもしないあの顔が。


今、再び目の前にいた。



「……な、んで、私のことを狙うの?合コンの時だって……」


「なんでって?そりゃ、目障りなROSEのいい人質だからだよ」



私を狙ってもいいことは無いはず。


なのに早乙女くんから言われた言葉に、はぁ?と首を傾げる。


私が、ROSEの人質……?



「なんだ、気づいてないのか?お前、あの総長の姫だろう?散々否定してるみたいだが俺にはわかる。アイツの大事なものはお前だと」



そう言って早乙女くんは私の顎を無理やりあげる。
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