無自覚なまま、愛を蓄えて。

愛の華【梓side】



優星が、攫われた。


その出来事を理解するのに時間はかからなかった。


1番恐れていたことが起こってしまった。


……どうしよう……全部、俺のせいだ。


俺が優星を暴走に誘ったから。


俺がわがままなせいで優星に怖い思いをさせてしまった。



「……梓……梓!!」


「り、と……」



さらわれていく優星を見つめていたら理人に名前を呼ばれ、ハッと意識を取り戻す。


どうやら頭の中は優星が攫われたという出来事でいっぱいで、周りが見えてなかったらしい。


理人に名前を呼ばれていることに気づかなかった。


真っ暗な林の中、JOKERのバイクが周りを照らす。



「おい、どうすんだよ。優星ちゃん攫われちまったよ!これじゃあ計画と違うじゃねぇか!」



取り乱したのは俺だけかと思ったがどうやら違ったらしい。


ちづはJOKERのバイクを見た後、俺の胸ぐらを掴み責めるように声を出す。
< 164 / 242 >

この作品をシェア

pagetop