無自覚なまま、愛を蓄えて。

梓くんの声を聞いて安心したのか、緊張が解けて涙が溢れ出す。視界が歪み、声が出そうなのをこらえた。



「い、いまねっ……さ、早乙女くんっていう男の人に追いかけてるの。なんかよくわかんないけど、怖くてっ……梓くん、助けて……!」



自分でも何を言っているのかよく分からなくなった。でも、助けて欲しいのには変わりなくて、そこだけは必死に訴えた。



『早乙女……って、もしかして星稜高校のか?』


「う、ん……」



早乙女くんの名前を出したら、分かりやすく反応した梓くん。恐怖やら安心感やら気持ちはぐちゃぐちゃ。


もうどうしたらいいか分からない。



『……わかった。いまどこ?すぐに行く』


「えっと……駅前のカラオケ店から少し先の大通りの路地裏」


『路地裏な。待ってろ。大丈夫だから』



梓くんの大丈夫だから、という言葉に少し救われ、ほっとする。


自分の居場所を伝えると電話は切れてしまったけど私は安心して梓くんを待っていた。
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