腹黒御曹司の一途な求婚
 帰ろう、と手を引かれて向かった先は久高くんの自宅マンション。
 
 家に入るやいなや、待ちかねたように久高くんが私を抱き寄せて、噛み付くようなキスを送ってくる。
 靴も脱がないまま夢中で口付けを重ねて、抱きしめ合って。
 
「このままここで抱きたい」

 劣情を露わにした久高くんが私を惑わすようにそう囁く。
 蠱惑的な誘いにそのまま頷きそうになるけれど、すんでのところで理性が働いて私は真っ赤になりながら首を横に振った。

「……ベッドまで待って?」

 想いが通じ合った歓びから抱き合いたいのは私も一緒だと、暗に告げるのはやっぱり恥ずかしい。
 堪らず目を伏せると、耳元でクスリと妖艶な笑い声が聞こえた。

「萌黄が俺のお願い聞いてくれたらいいよ」
「お願いって……?」
「名前、呼んで?俺の名前」

 目を細めて強請る久高くんからは、ハッと息を呑んでしまうほどの色香が滴っている。
 熱烈な眼差しにすっかり心を奪われて、私は気がつけば彼の名前を口にしていた。

「蒼士……」
「うん」
「蒼士、好き……好きなの……」

 堰を切ったように内側からひたすらに溢れて奔流する情愛を言葉に乗せれば、応えるようにキスが降ってくる。
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