腹黒御曹司の一途な求婚
 もつれるように、キスをしながらベッドへとなだれ込む。気がつけば横たわった蒼士の上に乗り上げるような体勢になっていた。
 はしたないことをしていたと、慌てて退こうとすると、腰をグッと押さえられてたちまち身動きが取れなくなった。
 
 私の服はいつの間にか肌蹴られていて、彼の手のひらが全身をまさぐっている。
 何でもないところでも、彼の指が滑ると背筋に甘い痺れが走った。
 
 どこかの器官が狂ってしまったんじゃないかと思うくらい、おかしいほど全身が刺激に敏感になっている。
 悦楽に思考をかき乱されて、あられもない嬌声を上げる口元を必死に押さえることしかできない。
 
「萌黄、それダメ」
「だ……って、声、でちゃ……」
「聞かせてよ。乱れて乱れてどうしようもなくなった萌黄が見たい」
「や……なんでそん、な……」

 意図せず潤む視界の中で、蒼士が嗜虐的に微笑んでいる。
 欲望が迸る視線に射貫かれれば、ゾクゾクと全身がわななき、体の奥からしっとりと蜜が溢れてくる。

「なんでって……萌黄は俺のものだから。全部知りたいと思うのは当然の欲求だろ?」

 その証を刻むように、蒼士は腕を立てて身を起こすと、私の胸の膨らみにきつく吸い付き、真っ赤な花弁を散らした。
 
「あ……」
「俺も萌黄のものだよ。だからもう、ずっと離れられないな」

 後頭部を引き寄せられ、耳元で熱く囁かれる。
 ずっと――その言葉は、欠けたままだった私の心を補うようにスッと染み込んでいった。

「うん。ずっと、ずっと一緒……」

 私の眦から零れ落ちた涙は、唇で受け止められた。
 流れるように唇を合わせ、何度も角度を変えて互いを貪り合う。
 吸って、舐めて、擦り付けあって。その度に淫靡な水音が響き、私の中の愉悦を高めていく。

 全身が燃えるように熱い。
 触れ合った部分から溶けていくようで、繋がり合うとより顕著にその熱を感じた。

 蒼士の動きに合わせて、私の体が不随意に震える。痛みはなくて、感じるのは鮮烈な快感だけ。
 互いの存在を内に刻みつけるように私たちは激しく交わり合い、最後にはひっしと抱き合って眠りについた。
 
 意識が暗転する寸前、私の体をまるで縛るように巻き付けている彼の腕に、そこはかとない幸福を感じて、私は思わず顔を綻ばせた。
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