花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
「こうやってこの台の上に髪が広がっているのもいやらしくて唆るな」
〝唆る〟なんて言われて、恥ずかしくて顔が熱くなる。

彼が、私の両手を私の頭の上で押さえつける。
大きな手は片手で足りてしまう。

「あっ……」
セーターの下に感じた長い指の感触が、下着の中に入ってくる。

「ん……ふっぁ」
肌に触れながら、ときどき唇に、頬に、首筋に、それから胸元にキスが降る。

手を押さえつけていた手はいつの間にかスカートの中。
ときどき身体がピクッて跳ねて、腰が浮く。
身体の奥から熱っぽく蕩かされていく。

「んっ」

気持ちいい……気持ちいい。

そう思っているのに言葉がうまく発せられない。

「君のそういう表情を見ていると、理性を保つのが難しい」

理性なんて無くして、早く一緒に溺れて欲しい。
私はもう、真っ白になってしまいそう。
そう思いながら彼の首に腕を回そうとして、止められる。

「今はここまでだな」
彼の手が服から抜け出る。

「え」
「ん?」

きっと残念そうな顔をしていた私に、櫂李さんはあまり見せないイタズラっぽい笑顔。

「どうした? 木花」
「え……あの」

あと少しだったのに……どうして急にやめちゃうの?
仰向けのまま、呆然としてしまう。

「もっと気持ちよくなりたかった?」
笑顔で言われて顔がカァッと熱くなる。

彼に腕を引っ張られて起こされて、櫂李さんが服を整えてくれて、それからまた頬に触れられる。

「他の男のことを考えた罰だよ」
「え……」

彼が耳元に顔を寄せる。

「続きは今夜しよう」
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