花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—

第弐拾話 香リ

***

クリスマスイブ。

櫂李さんが予約してくれたレストランで、デザートを待つ間にプレゼントを渡そうとすると彼も箱を取り出した。
彼はあの絵をくれていたのに、さらにプレゼントを用意してくれていた。

「これ、香水ですか?」
「ああ。知り合いの調香師に頼んで調香してもらったんだ」
透けた淡いピンク色の液体が入ったアンティーク調の小瓶。
「これって……もしかして、桜?」
彼が頷く。

「うちの庭や櫻坂の桜と同じ、ソメイヨシノの香りにできるだけ近い香りにしてもらった」
「すごーい! ありがとうございます。嬉しい!」
これってつまり、私の匂いも櫂李さんが選んだ桜の香りにするってこと。
大人でおしゃれで櫂李さんらしい。

「私からは、これ」
櫂李さんのプレゼントに比べたらずーっと安くて子どもっぽいかもしれないけど。

「これ、組紐(くみひも)?」
私もコクッと頷いた。紺色の、端に小さなガラス玉のついた細い組紐。

「もうバレてたと思うんですけど……櫂李さんに自分のお金でプレゼントしたくてアルバイトしてたんです」
「うん、知っていたよ」
そう言って優しく笑う。

やっぱり。
きっと「アルバイトしたい」って言い出した時から気づいてたよね。
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