花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
画家の彼が目の病気だなんて。

「その服装だって髪形だって、私があなたに会っても気づきにくいようにしたんじゃないですか……?」
彼は黙っている。

「そんな風に遠ざけようとしたって意味が無いです。だって、あなたは他の人と全然違うから」
「木花、違うと言っているだろ?」
「でも——」

「君は」
彼が私を見つめる。

「もっとまっすぐ、幸せになるべきだ」

「え……?」

「菊月先生なら、君をちゃんと幸せにしてくれる」
「そんなの……私は、あなたが好きなのに」
彼がまたため息をつく。

「とにかく、私と君とはもう他人なんだ」
そう言って彼は車道側に行き、手を上げる。

「待ってください! まだ話が——」
彼の左腕を掴んだ私の手を振り払うと、そのまま彼はタクシーに乗り込んでしまった。

「櫂李さん!」
「出してください」
運転手さんに指示を出す。

「他人だって言うならどうして——」

タクシーのドアが感情も無く閉まり、走り去ってしまった。
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