花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
***

それから三日後。
日差しがぽかぽかと随分春めいている。
「ジェットコースター乗らない?」
「下で見てるよ」
「えー! そんなのつまらないよ。乗ろうよ」
春らしい軽やかな服装になった颯くんと私は、ベリが丘の隣街にある遊園地に遊びに来ていた。
長い付き合いなのに、颯くんは絶叫マシンが苦手なんだって初めて知った。
「ゴーカートなら自信ある」
「そんなの普段から運転してるからでしょ? ずるい。いいから、ジェットコースター乗るの!」
無理矢理乗せたジェットコースターからおりると、颯くんはしばらく休憩と言って青い顔でベンチに座った。
「怖かった?」
「全っ然」
「強がっちゃって」
遊園地の明るい雰囲気は気持ちも明るくしてくれる。周りからも他の人たちが楽しそうに笑う声が聞こえてきて、自然に笑顔がこぼれる。
「ポップコーン食べたいな。キャラメル味のやつ」
「買ってきてやるから木花はそこに座ってろよ」
こうやって颯くんがふいに女の子扱いをしてくるから、そのたびに調子が狂う。それを素直に受け入れる私に見せる颯くんの嬉しそうな笑顔に、今までの態度を反省したりもする。
だけど私は、こうやってベンチに座っている時でも行き交う人の中に櫂李さんがいるんじゃないかと探してしまう。いるわけがないのに。
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