花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
言葉を選んだ私の質問に、彼は少しの間を開けた。

「ああ」
「……そうですか。安心しました」

「聞きたいのがそれだけだったら、もう——」
「話はまだ終わっていません」

「離婚のことか? 君はこんなところで立ち止まっていないで、早く菊月先生のところにいくべきだ」
彼が突き放すように言う。

「離婚の話ではないです」

私はゴクッと小さく喉を鳴らした。

「父の話は、あなたにもしたことがなかったですよね」
「君のお父さんが仕事中の事故で亡くなったというのは聞いている」

私は首を横に振る。

「その日の少し前のことです」
「少し前?」
「はい。誰にも……祖母にも言ったことがない話です」
この話は、自分の胸にしまっておくつもりだった。

「あの頃は外食なんて全くしなかったんですけど、父が珍しくレストランに連れて行ってくれて——」

***

私が中学二年の頃でした。
母が亡くなって一年が経った頃です。
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