花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
『珍しいね、お父さんと外で夜ご飯なんて』
『たまにはな』

『おばあちゃんも連れて来てあげれば良かったね』
『親子水入らずもたまにはいいだろ?』
『うーん、まあね』

あの頃はちょうど思春期で、父と二人というシチュエーションが少し照れくさくて、素直に「嬉しい」って言えませんでした。

『菊月さんのところの颯太郎くんとは今でも付き合いがあるのか?』
『ん? うん。たまにご飯に連れて行ってくれるよ。宿題も見てくれるし』
『そうか、良かったな』

その日の父は私に最近の出来事や状況を聞いて、とくに問題が無いことに満足しているようでした。

『木花、パフェ好きだっただろ?』
『え、でも……』
『子どもが親に遠慮なんてしなくていい。今日は特別だ』
『本当? じゃあ、フルーツパフェ』
それからパフェが届いて、すごく美味しかったのを覚えてます。

『うまいか?』
『うん! お父さんも食べる?』

『いや、お父さんは木花が美味しそうに食べてるのを見てるだけでいい』

その言葉も気恥ずかしくて、その後はちょっとムスッとして食べていたと思います。
本当は美味しくて、嬉しかったのに。
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