花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
それから二人で歩いて家に帰りました。

『……お父さん、今日なんか変じゃない？』
『そうか？』
『よくわからないけど、なんか……』
『今日は木花が美味しそうにパフェを食べてて嬉しかったよ』
『何それ』

『木花にはずっと笑っててほしい』

父のその言葉も、ただただ気恥ずかしくて全然素直に受け取れなかった。

『木花、幸せになるんだよ』

『も〜！　さっきから何？　私が結婚するみたいじゃない』
『結婚かあ。木花はどんな人と結婚するんだろうな』
『私まだ中学生なんだけど！』

＊＊＊

「父は、それから数日後に仕事中の事故で亡くなりました。事故の現場は誰も見ていません」

話を終えて、「ふぅ」と息を吐いた。

「父の死は……事故だって信じることにしてきました。だけど、私はあれ以来パフェが食べられないんです」
あの日のことを思い出すと息が苦しくなる。
「私を見ていた父の表情を思い出すから」

櫂李さんは、何を言うべきか考えている。

「私があなたにこの話をしたのは……」
喉の奥がギュッと掴まれているみたいに苦しい。

「櫂李さんが、あの日の父と同じ表情をしているからです」

どこか疲れたような、諦めたような表情。
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