花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
櫂李さんの車は黒くてスポーティーだけど品の良い雰囲気の外車。
SUVってやつらしい。

外国の血が混じるお母様ゆずりの色素の薄い瞳は、強い光に弱いからとサングラスをかけている。
それもまた印象が変わってかっこいい。

今日は私の祖母の月命日だから二人でお墓参りに行こうと櫂李さんが言ってくれた。
古川家のお墓はベリが丘の隣街の海が見える高台にある。
途中、お花屋さんに寄ってお墓に供えるためのグラジオラスやスターチスを買った。
華やかで、花が好きだった祖母も母も喜んでくれそう。

「月命日って、父の分も母の分も今まであまり気にしたことが無かったです」
心地良いエンジン音の中、窓の外を流れる海辺の景色を見ながら言う。

「考える余裕もなかったんじゃないか? 無理に墓参りに行かなければいけないわけではないから、思い出したときに行けばいい」
櫂李さんは、会ったこともない私の祖母の月命日を気にしてくれていた。
それがとても嬉しいし、そういうところが人間的にとても好き。

お墓に着くとまず、二人できれいに掃除をした。
海をのぞむ高台は、風に混じってほんのり潮の匂いがする。

「おばあちゃんを、ちゃんとおじいちゃんと同じお墓に入れてあげられて良かったです。最後の最後までおじいちゃんのことが大好きな人だったから」
「今頃きっと雲の上で再会してるよ」

そう言って櫂李さんが火をつけた線香を分けあって二人で手を合わせる。
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