花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
第拾弐話 一陽来復
***
十月になり、だんだんと秋めいてきた頃、大学は後期の授業が始まった。
私は専攻を変えるため、授業数を前期よりもかなり増やさなければいけなかった。
それでも、祖母の看病やアルバイトに奔走していた半年前を思えば大変でもなんでもない。
十月半ばの日曜日。
如月さんが、パーティーで約束していた書を掛け軸に仕立てて我が家に持って来てくれた。
【一陽来復】
客間の畳の上に広げられた掛け軸にはそう書かれている。
「冬が終わって春が来るように、悪いことのあとには良いことがやって来るっていう意味だよ」
如月さんが私に説明してくれた。
「素敵な言葉ですね」
この言葉みたいに、今の私は冬のあとの春にいるような幸せな暮らしをさせてもらっている。
「いい言葉。ふふ」
文字を見て、しみじみと思ってしまう。
「相変わらず、書と人物がここまで違う書道家も珍しいな」
櫂李さんが皮肉っぽく笑う。
十月になり、だんだんと秋めいてきた頃、大学は後期の授業が始まった。
私は専攻を変えるため、授業数を前期よりもかなり増やさなければいけなかった。
それでも、祖母の看病やアルバイトに奔走していた半年前を思えば大変でもなんでもない。
十月半ばの日曜日。
如月さんが、パーティーで約束していた書を掛け軸に仕立てて我が家に持って来てくれた。
【一陽来復】
客間の畳の上に広げられた掛け軸にはそう書かれている。
「冬が終わって春が来るように、悪いことのあとには良いことがやって来るっていう意味だよ」
如月さんが私に説明してくれた。
「素敵な言葉ですね」
この言葉みたいに、今の私は冬のあとの春にいるような幸せな暮らしをさせてもらっている。
「いい言葉。ふふ」
文字を見て、しみじみと思ってしまう。
「相変わらず、書と人物がここまで違う書道家も珍しいな」
櫂李さんが皮肉っぽく笑う。