花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
彼女と如月さんが共同でオーナーをしているというギャラリー『Les Quatre Saisons(ル キャトル セゾン)』は書店から三分ほどのところにあった。

「いつかの着物より大人っぽく見えるわね」
ギャラリーへの道を歩きながら、透子さんが私の服装の感想を言う。
大学に行くための薄手のグレーのニットにデニムのパンツというカジュアルな服装が着物と比べられている。
髪をまとめているから、あの日よりも多少は大人っぽいのかもしれない。
だけどきっと、彼女が言いたいのはそんなことじゃない。

私に似合うのがどういう服か、ってこと。

「あの着物は櫂李が選んだのかしら」
私は「はい」と頷く。

「やっぱり。淡い色が彼好みって感じがしたの」
彼女がにっこり笑う。

あの日の透子さんの着物も藤色で、言い方を変えれば淡い紫だった。
それはつまり櫂李さんの好みに合わせたということ?

「……彼が選んでくれた浴衣は淡くない臙脂色、でしたけど」
子どもっぽい対抗心だって自分でもわかるけど、彼女から感じる負の感情についつい言ってしまった。

彼女は一瞬表情が無くなって黙る。

「浴衣は着物とは違うものね」

彼女が冷えた声でつぶやいたところで、ギャラリーに到着した。
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