その指先で、僕を描いて。
私はその後、美術部に入部届を提出し晴れて美術部員となった。


美術部顧問の橋本(はしもと)先生はとても優しく、引っ込み思案な私の事を丁寧に美術部員1人1人に紹介してくれた。


その中にもちろん颯先輩もいて。


先生が颯先輩に紹介する時に、先輩はすぐ



「遥ちゃん。先生、僕達もう仲良いんだよ。知らなかった?」


なんて悪戯な笑みをして私の方を見て言うから先生が「やだ、そうなの?」と盛り上がるから私が顔を赤くしてしまった。


ずるい。


ずるい人だ、先輩は。



そこから月日が経ち、私は主に美術部員の人達と過ごすようになった。



颯先輩との距離は縮まったようで縮まってないような…

微妙な感じ。


私はまだこれが"恋"だと認めていない。
認めたら、これ以上の関係を求めたら先輩がどこかに消えちゃう気がして。


先輩は普段からずっと明るくて常に笑顔でいて温かい人だ。


けど、ふとした時に距離を感じる謎めいた部分がある。
部活以外は何してるかも知らないし、他の趣味も全然知らない。


仲良くなったようでなれてないんだなあ、って落ち込む。
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