カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「…」
「先輩は何を描こうとしてたんですか?」
「覚えてない」
「そうですよね。私、その日は黄色いカーディガンを着てたんですよ。春っぽくてお気に入りでした。少し風の強い日で、友達とお弁当を食べる場所を探してました」
ジッと聞いていることがツラくなったのか、先輩は私の髪の毛の先をイジったり、無意味に手を握ったりした。
あんなに「俺を思い出せ」って言ってたくせに。
「遠くから見たら散った桜の花びらが風に舞ってるのかなって思ってました。でもそれはビリビリに執念深く破かれた画用紙でした。何かの映画のエンドロールでも観てるみたいな気分でした。四人くらいの男子に囲まれて、やけに綺麗な男の子がボーッと空を見上げてました」
「砂雪、分かったから。もういいよ」
「だめです。ちゃんと聞いてください」
先輩は諦めたように息を吐いた。
「写生の授業に来てるって言ってたからあの人も絵を描いてたんだ。でも意地悪されて破かれちゃったんだってすぐに分かりました。それは悲しい光景なはずなのに、先輩があんまり綺麗だったから…とても美しいものを見ている気持ちになりました」
「はは…変な奴」
「でも私、居ても立っても居られなくなって、友達にごめんって言って走り出してたんです。その輪の中に入って、何やってんのとかそんな感じのことを言ったと思います」
先輩が「覚えてるよ」って言って、冷たい指先で私の頬に触れた。
「先輩は何を描こうとしてたんですか?」
「覚えてない」
「そうですよね。私、その日は黄色いカーディガンを着てたんですよ。春っぽくてお気に入りでした。少し風の強い日で、友達とお弁当を食べる場所を探してました」
ジッと聞いていることがツラくなったのか、先輩は私の髪の毛の先をイジったり、無意味に手を握ったりした。
あんなに「俺を思い出せ」って言ってたくせに。
「遠くから見たら散った桜の花びらが風に舞ってるのかなって思ってました。でもそれはビリビリに執念深く破かれた画用紙でした。何かの映画のエンドロールでも観てるみたいな気分でした。四人くらいの男子に囲まれて、やけに綺麗な男の子がボーッと空を見上げてました」
「砂雪、分かったから。もういいよ」
「だめです。ちゃんと聞いてください」
先輩は諦めたように息を吐いた。
「写生の授業に来てるって言ってたからあの人も絵を描いてたんだ。でも意地悪されて破かれちゃったんだってすぐに分かりました。それは悲しい光景なはずなのに、先輩があんまり綺麗だったから…とても美しいものを見ている気持ちになりました」
「はは…変な奴」
「でも私、居ても立っても居られなくなって、友達にごめんって言って走り出してたんです。その輪の中に入って、何やってんのとかそんな感じのことを言ったと思います」
先輩が「覚えてるよ」って言って、冷たい指先で私の頬に触れた。