カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
両腕を目一杯使って先輩を私から引き剥がした鈴城さんは思いっきり反動をつけて先輩をソファに放り投げた。

鈴城さんはそんなに身長が高いほうじゃないし、華奢だ。
本来なら本郷先輩が負けるはずないんだけど、先輩も何故か私同様、力が入らないのか、簡単にソファに体を預ける状態になった。

背もたれに身を預けたままだらんともたれかかる先輩はネクタイもぐちゃぐちゃになっちゃってるし、呼吸が荒くて余裕が無い。
本当に病気の発作だったのかもしれないなんてこの期に及んで思ってしまった。
絶対にそんなこと無いのに。

「砂雪ちゃん!大丈夫!?」

「は………ぃ…」

「変なことされてない!?………って、ごめん、されてるよね…この馬鹿野郎!」

鈴城さんが持ってたカバンで本郷先輩の頭を殴った。
バコッて低い音がした。

「ッ…なにすんだよ」

「それはこっちのセリフ!あんたはここでくたばってな!」

「砂雪ちゃん、立てる?」って言いながら、鈴城さんが肩を貸してくれた。
もたれるようにしてなんとか立ち上がった私は、ほとんど鈴城さんに抱えられるようにしながら生徒会室を出た。

なんでこんなに力持ちなんだろう。
ひょっとしたら普段から本郷先輩にも対抗できるのかもしれない。

生徒会室を出てすぐの階段の踊り場に座らせられた。

「ちょっと待ってね」

お花柄の小さいポーチからすごく小さいジップ袋を出して、私に渡してくる。
中身はオブラートに包まれた粉薬みたいだった。

「飲んで」

カバンから取り出したミネラルウォーターも渡してくれる。
生徒会室にあったのと同じ飲料水だった。

冷たくて気持ちいい。
たった今買ってきたみたいにペットボトルは冷たくて水滴が沢山できていた。

「なんですかコレ」

「いいからとにかく飲んで」

謎の粉薬を口に含んで、ミネラルウォーターをゴクっと飲んだ。
その瞬間にカラカラだった喉が潤っていく感覚。
衝動を抑えられないまま、ほとんどの水を飲み干してしまった。

「すみません」

「そのくらいがちょうどいいよ」

鈴城さんが私の隣に腰を下ろす。
ハンカチで額を拭いてくれる。

「まだしんどい?」

「はい」

「私ではその熱は解放してあげられない。もう少し我慢してね」

「なんなんですか…私なにされちゃったんですか」
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