だって、そう決めたのは私
「夫婦って難しいんだね」
「そう、かなぁ。上手くやってる夫婦だって当然あるからね。ほら、宏海のお姉さんやお兄さんは、幸せな家族でしょう。それも当然、表向きしか分からないけれど」
「あぁ……まぁね。想像は付くけど」
ケラケラっと宏海が笑った時、携帯がブブブっと震えた。ちょっとごめんね、と断って見ればカナタだ。『九州に行ってきたよ』と。最近、担当作家さんが増え、忙しくしているらしい。無理してないといいけれど。
『お家に帰ったのかな。おかえり』
『忙しそうだけれど、無理しちゃダメよ』
そう打ち込んで、随分と母親が板に付いてきたな、などと思う。こんな報告はマストではないのだけれど、カナタが気が済むまでは続けるつもりだ。母として、彼の傍にいることが当たり前になったら、小林さんのところへ一緒に行ってみたい。手紙は出したけれど、感謝してもしきれない彼らに、私はきちんと会って礼を言わねばならないから。
「大丈夫?」
心配そうに覗き込む宏海。「ごめん、ごめん。大丈夫」と携帯を膝の上に置いた。また顔のことを言われるといけないから、キリッとした表情を貼り付ける。母の顔をしてる、なんて指摘されるわけもないけれど。
「おばちゃんのことは驚いたけど、自分の親のことも考えちゃったよね」
「あぁ、それはそうよね。匡とも話して思ったけど、兄弟がいるって羨ましい。親に何かあったら、私一人で考えて、支えなきゃいけないもん。ちょっと不安」
「そっかぁ。そうだよね。でもさ、僕がいるじゃん。いつでも頼ってね」
「いやぁ……それはちょっと悪いよ」
苦笑するしかなかった。そう思ってくれるのは嬉しけれど、私はあくまで同居人。私が世話になっているのも申し訳ないくらいなのに。両親のことまで、彼の荷物になってはいけない。
今回のことがあって、私も色々考えた。今はまだ元気な両親に、何をしてあげられるだろう。旅行も最近は一緒に行っていない。贈り物だって、改めてしたのはいつだったか。あれこれと考えた結果、一番したいことはカナタに会わせることだった。けれどこればかりは、急く気持ちがあろうと勝手には進められない。
「そう、かなぁ。上手くやってる夫婦だって当然あるからね。ほら、宏海のお姉さんやお兄さんは、幸せな家族でしょう。それも当然、表向きしか分からないけれど」
「あぁ……まぁね。想像は付くけど」
ケラケラっと宏海が笑った時、携帯がブブブっと震えた。ちょっとごめんね、と断って見ればカナタだ。『九州に行ってきたよ』と。最近、担当作家さんが増え、忙しくしているらしい。無理してないといいけれど。
『お家に帰ったのかな。おかえり』
『忙しそうだけれど、無理しちゃダメよ』
そう打ち込んで、随分と母親が板に付いてきたな、などと思う。こんな報告はマストではないのだけれど、カナタが気が済むまでは続けるつもりだ。母として、彼の傍にいることが当たり前になったら、小林さんのところへ一緒に行ってみたい。手紙は出したけれど、感謝してもしきれない彼らに、私はきちんと会って礼を言わねばならないから。
「大丈夫?」
心配そうに覗き込む宏海。「ごめん、ごめん。大丈夫」と携帯を膝の上に置いた。また顔のことを言われるといけないから、キリッとした表情を貼り付ける。母の顔をしてる、なんて指摘されるわけもないけれど。
「おばちゃんのことは驚いたけど、自分の親のことも考えちゃったよね」
「あぁ、それはそうよね。匡とも話して思ったけど、兄弟がいるって羨ましい。親に何かあったら、私一人で考えて、支えなきゃいけないもん。ちょっと不安」
「そっかぁ。そうだよね。でもさ、僕がいるじゃん。いつでも頼ってね」
「いやぁ……それはちょっと悪いよ」
苦笑するしかなかった。そう思ってくれるのは嬉しけれど、私はあくまで同居人。私が世話になっているのも申し訳ないくらいなのに。両親のことまで、彼の荷物になってはいけない。
今回のことがあって、私も色々考えた。今はまだ元気な両親に、何をしてあげられるだろう。旅行も最近は一緒に行っていない。贈り物だって、改めてしたのはいつだったか。あれこれと考えた結果、一番したいことはカナタに会わせることだった。けれどこればかりは、急く気持ちがあろうと勝手には進められない。