だって、そう決めたのは私
「そうだ。カナちゃん、クリスマスのワイン頼んでもいい?」
「いいよ。赤? 白?」
「そうだなぁ。あ、シャンパンは?」
「おぉ、たまにはいいかもね。じゃあ、明日の仕事の後に見てくるよ」
「うん、お願い」

 もうクリスマスかぁ。これが終われば、もうすぐに年越しである。一年なんてあっという間だけれど、今年はいつもよりもそう感じている。過去を後悔する毎日から、再会した息子とこうしてやり取りをする日々へ変わった。ようやく前を向けたんだな。そんなことを思っていたら、カナタから返事が届いた。

『もし具合悪くなったら、母さん看病してくれるでしょ?』

 そんなものは当然だ。連絡が来たなら、すぐに飛んで行くだろう。ずっとしてあげられなかったことだ。私は何を押してでも、行くに違いない。チラリと宏海を確認して、すぐにメッセージを打った。

『そんなの当然よ。看病くらいは出来るから、安心して』
『そうだ。もうすぐクリスマスだけれど、カナタ欲しいものある?』

 母として、私は二十年間何もしてあげられていない。もうすっかり大人になった彼に、今更クリスマスプレゼントなんておかしいだろうか。けれど、何でもいいからやりたいと思ってしまう。 
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