だって、そう決めたのは私
「えっと……?」
「中川さん。すみません」

 まず口を開いたのは、佐々木くんだった。それから深く頭を下げる。

「えっと……佐々木くんが謝ること、何かあった?」
「いや、中川さんの悩みの大元です。あれ……えっと、中川さんが気にされている連絡を取っていた相手。あれ、俺なんです」

 え? 彼は今、何と言ったか。

 僕は静かに、言われたことを反芻する。カナちゃんが夜な夜な連絡を取っていた相手。きっとそういう(・・・・)相手だ、と思ってきた。それが、佐々木くん? え……どういうこと? 僕は軽いパニックだ。何度も何度も繰り返してみるが、やっぱり分からない。佐々木くんが、カナちゃんと頻回に連絡を取ることがある? いや、ないよな。だとしたら……そういうこと?

「カナタ、その言い方だと誤解が生まれる」
「でも謝らないと」

 目の前で、二人が話す。カナちゃんは、佐々木くんをカナタと呼んだ。フル回転で働かせた頭が、きっとそういうことだ、と答えを掴む。あぁ、でも駄目だ。僕は上手く飲み込めない。
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