だって、そう決めたのは私
「懐かしいな。宏海はよく、ここでカナコに勉強見てもらってたよな」
「うん。だって、まぁくんは勉強好きじゃなかったでしょ」
「まぁそれもあるけど、俺は大学は受けるつもりもなかったしな。カナコが一番勉強してたし。お前のことも、ホントよく可愛がってたよ」
「可愛がってた、か。まぁそうだよね……どうせ、そういう対象にはしてもらえなかったし。カナちゃんはずっと……まぁくんのことが好きだったもんね」
初恋を茶化された気がして、うっかり数十年前の悔しさをぶつけた。ずっとうちに秘めて、決して口にすることのなかった嫉妬。ムゥっとしたままの唇が、自分でも見えた。優越感にでも浸っているだろうか。反論は聞こえてこない。ジロリと見れば、予想と違って、彼はひどく驚いていた。あれだけの視線を浴びていたのに、全く気付いていなかったのか。ホント、ムカつくな。
「お前、何言ってんの」
「気付いてなかったの? カナちゃんはいっつも、カウンターの中ばっかり見てた。目の前で勉強をしてる僕じゃなくって、カウンターの中にいたまぁくんしか見てなかった」
「いやいやいや、それは違うぞ?」
「違わないよ。だって、それを僕はいつも見てたんだから」
睨み合う。いや、睨んでいるのば僕だけだ。あぁ、とか、うぅん、とか。まぁくんは小さく何かを言っている。あぁ、本当にムカつく。間違いないって言うのに。
「あぁ、もう面倒くせぇな。もういいか……いいよな。時効だよな」
「何が」
ドアの開閉音がする。佐々木くんが戻ってきたのだろう。ムスッとした僕はそちらも見ないまま、僕は間違ってないからね、と幼馴染に念を押した。
「あのなぁ。カナコは俺じゃなくて」
「私が、何」
「おぉ、カナコ」
佐々木くんと一緒に、カナちゃんが目の前にいた。冷ややかな視線をまぁくんに向けて、コーヒー、と低く言う。あ、ちょっと怒っている。昔のことを掘り出していた僕にだろうか。ピリッとした空気が伸びてくる。どうしよう。もう逃げられない。下を向いた僕の前に、カナちゃんが座った。そして佐々木くんが、その隣に……座った?
「うん。だって、まぁくんは勉強好きじゃなかったでしょ」
「まぁそれもあるけど、俺は大学は受けるつもりもなかったしな。カナコが一番勉強してたし。お前のことも、ホントよく可愛がってたよ」
「可愛がってた、か。まぁそうだよね……どうせ、そういう対象にはしてもらえなかったし。カナちゃんはずっと……まぁくんのことが好きだったもんね」
初恋を茶化された気がして、うっかり数十年前の悔しさをぶつけた。ずっとうちに秘めて、決して口にすることのなかった嫉妬。ムゥっとしたままの唇が、自分でも見えた。優越感にでも浸っているだろうか。反論は聞こえてこない。ジロリと見れば、予想と違って、彼はひどく驚いていた。あれだけの視線を浴びていたのに、全く気付いていなかったのか。ホント、ムカつくな。
「お前、何言ってんの」
「気付いてなかったの? カナちゃんはいっつも、カウンターの中ばっかり見てた。目の前で勉強をしてる僕じゃなくって、カウンターの中にいたまぁくんしか見てなかった」
「いやいやいや、それは違うぞ?」
「違わないよ。だって、それを僕はいつも見てたんだから」
睨み合う。いや、睨んでいるのば僕だけだ。あぁ、とか、うぅん、とか。まぁくんは小さく何かを言っている。あぁ、本当にムカつく。間違いないって言うのに。
「あぁ、もう面倒くせぇな。もういいか……いいよな。時効だよな」
「何が」
ドアの開閉音がする。佐々木くんが戻ってきたのだろう。ムスッとした僕はそちらも見ないまま、僕は間違ってないからね、と幼馴染に念を押した。
「あのなぁ。カナコは俺じゃなくて」
「私が、何」
「おぉ、カナコ」
佐々木くんと一緒に、カナちゃんが目の前にいた。冷ややかな視線をまぁくんに向けて、コーヒー、と低く言う。あ、ちょっと怒っている。昔のことを掘り出していた僕にだろうか。ピリッとした空気が伸びてくる。どうしよう。もう逃げられない。下を向いた僕の前に、カナちゃんが座った。そして佐々木くんが、その隣に……座った?