だって、そう決めたのは私
あの日、不安と緊張で喉がカラカラになりながら、彼の家を訪ねた私。初婚の息子だ。宏海がもう立派な大人だとしても、反対される覚悟もしていた。出された茶を啜り、一呼吸して話を、と思っていたところに、呑気な宏海の声が全てを打ち破ったのである。
『あのね、僕、お父さんになるんだよ』
彼はそう、高々に宣言したのだ。目を丸めた両親が確認するのは、息子の隣で頭を抱えている五十を過ぎた女。私に子どもが出来るわけない、と思っただろうが、それを口にするわけにいかない自制心が見えた。ニコニコしている宏海。それに溜息を吐いてから、バツイチで息子がいるんです、と私は口を開いた。その息子とも仲良くしてくれていて、と聞くうちに、彼らも合点がいったのだろう。実は、と打ち明けられた私たちの関係への不安。きちんと結婚するなら、と手放しで喜んでくれたのだ。それから、より慎重に話さなければ、と思っていた名字の件。それも、どこへ行っても息子は息子よ、とあっさり認められたのだった。改めてよろしくね、と私に微笑んだ彼の母。宏海と同じ、とても優しい顔をしていた。私の両親は、当然反対などなかったし。泣いて喜ぶだけだったのは、まぁ言うまでもない。
証人の欄は、悩んだけれど、互いの友人に頼むことにした。本当の姿を見届けてくれていた、匡と暁子だ。匡は震える文字で記入してから、本当に良かった、と私たちを抱きしめてきて、ちょっと泣きそうになった。いい友人を持ったな。心の中でそう思ったけれど、一生、口にすることはないだろう。
『あのね、僕、お父さんになるんだよ』
彼はそう、高々に宣言したのだ。目を丸めた両親が確認するのは、息子の隣で頭を抱えている五十を過ぎた女。私に子どもが出来るわけない、と思っただろうが、それを口にするわけにいかない自制心が見えた。ニコニコしている宏海。それに溜息を吐いてから、バツイチで息子がいるんです、と私は口を開いた。その息子とも仲良くしてくれていて、と聞くうちに、彼らも合点がいったのだろう。実は、と打ち明けられた私たちの関係への不安。きちんと結婚するなら、と手放しで喜んでくれたのだ。それから、より慎重に話さなければ、と思っていた名字の件。それも、どこへ行っても息子は息子よ、とあっさり認められたのだった。改めてよろしくね、と私に微笑んだ彼の母。宏海と同じ、とても優しい顔をしていた。私の両親は、当然反対などなかったし。泣いて喜ぶだけだったのは、まぁ言うまでもない。
証人の欄は、悩んだけれど、互いの友人に頼むことにした。本当の姿を見届けてくれていた、匡と暁子だ。匡は震える文字で記入してから、本当に良かった、と私たちを抱きしめてきて、ちょっと泣きそうになった。いい友人を持ったな。心の中でそう思ったけれど、一生、口にすることはないだろう。