だって、そう決めたのは私
番外編 宏海
「えぇぇぇぇぇぇ」
直くんの叫び声が聞こえる。僕は何となく、彼らの話を察して笑ってしまった。カナタくんが向こうに行って、話の中で二人の関係を告げたのだろう。だから僕も、井上くんにも同じように話した。カナちゃんが佐々木くんのお母さんなんだ、と。その結果、同じような声を上げ、彼は目を丸めたまま固まっている。
「驚くよねぇ。僕も、聞いた時はすごい驚いたんだ」
「えっ、え? 中川くんは知ってて、プロポーズしたの?」
「ううん。何も知らなかった。あの二人が再会したのは、一年くらい前のことでね。僕には言わずに、彼女は一生懸命、母親として息子に寄り添ってたみたい。全部知ったのは、返事をもらった時。佐々木くんに呼び出されて、それからカナちゃんも来て。そうしたら、彼が息子だって言われて。バツイチなのは聞いてたんだけどねぇ。何が何だか」
「へぇぇ。ちょっと飲み込むの難しそうだねぇ」
「そう。プロポーズの相談もしてたのにって……まぁでも、嫌な気持ちは一つもなくてね。ただただ、嬉しかったんだよね」
あの時、カナちゃんはひどく強張った顔をしていた。まぁくんにはきっと、僕があそこに行く前に話したのだろうと思っている。彼が驚いた様子はなかったし、落ち着いていた。だからだろう。あ、これは事実なんだなって、素直に受け止められた気がする。驚きは当然大きかったけれど、一番心に湧いたのは『嬉しい』だった。
「佐々木くんってさ。結構、クールな感じだったでしょう? でもね、カナちゃんの隣りに座って、彼女を母さんって呼ぶとさ。不思議なんだけど、ようやく普通の子に見えてね」
本心だ。カナちゃんが、母親の顔をする。カナタくんは、カナちゃんの前ではちゃんと息子の顔をしている。当然なんだけれど、それは僕を安堵させた。佐々木くんは、色々あって、嫌な思いをたくさんしたのだろうと思う。僕が考える以上に、きっと。いつだって彼は、無理に大人になろうとしているように見えたから。その苦しみに寄り添ってあげたい気持ちもあるけれど、僕は問うつもりはない。
直くんの叫び声が聞こえる。僕は何となく、彼らの話を察して笑ってしまった。カナタくんが向こうに行って、話の中で二人の関係を告げたのだろう。だから僕も、井上くんにも同じように話した。カナちゃんが佐々木くんのお母さんなんだ、と。その結果、同じような声を上げ、彼は目を丸めたまま固まっている。
「驚くよねぇ。僕も、聞いた時はすごい驚いたんだ」
「えっ、え? 中川くんは知ってて、プロポーズしたの?」
「ううん。何も知らなかった。あの二人が再会したのは、一年くらい前のことでね。僕には言わずに、彼女は一生懸命、母親として息子に寄り添ってたみたい。全部知ったのは、返事をもらった時。佐々木くんに呼び出されて、それからカナちゃんも来て。そうしたら、彼が息子だって言われて。バツイチなのは聞いてたんだけどねぇ。何が何だか」
「へぇぇ。ちょっと飲み込むの難しそうだねぇ」
「そう。プロポーズの相談もしてたのにって……まぁでも、嫌な気持ちは一つもなくてね。ただただ、嬉しかったんだよね」
あの時、カナちゃんはひどく強張った顔をしていた。まぁくんにはきっと、僕があそこに行く前に話したのだろうと思っている。彼が驚いた様子はなかったし、落ち着いていた。だからだろう。あ、これは事実なんだなって、素直に受け止められた気がする。驚きは当然大きかったけれど、一番心に湧いたのは『嬉しい』だった。
「佐々木くんってさ。結構、クールな感じだったでしょう? でもね、カナちゃんの隣りに座って、彼女を母さんって呼ぶとさ。不思議なんだけど、ようやく普通の子に見えてね」
本心だ。カナちゃんが、母親の顔をする。カナタくんは、カナちゃんの前ではちゃんと息子の顔をしている。当然なんだけれど、それは僕を安堵させた。佐々木くんは、色々あって、嫌な思いをたくさんしたのだろうと思う。僕が考える以上に、きっと。いつだって彼は、無理に大人になろうとしているように見えたから。その苦しみに寄り添ってあげたい気持ちもあるけれど、僕は問うつもりはない。