極上溺愛契約婚で甘やかされて～エステで出会ったセラピストは御曹司でした～
　玲の後悔混じりの寂しい声が部屋の中にこだました。確かに彼は会社の御曹司だが、私がいる部署の実態までは把握出来ていなかったのだろう。

（花形部署じゃないし、仕方ない）

　私がいる部署は内勤の総務の事務。花形である営業部や広報部と比べると地味な部署だ。それにもし彼はいつもオフィスにいる訳では無いとしたら、更に気が付きにくいのかもしれない。

「気にしないでください」

　気がつけばその言葉が私の口から零れ出ていた。彼が自分を責めるのは間違っている。

「雪乃さん……」
「あなたのせいでは無いです」
（悪いのはお局や先輩方だし）
「すみません、あなたの置かれている立場も知らなかったもので……その事を知ると余計にあなたを手放したくなくなると言うか、よく言葉に言い表せられないのですが……」

　玲は神妙そうな面持ちのまま、ぎゅっと私の身体を抱きしめた。

「れ、玲さん……」
「私はあなたを大事にしたい。それに以前見た時、あなたは上司かどなたかに怒られている場面を見ました。なので余計に早くあなたの職場環境に気づいてあげられたら……」
「……見たんですか？」
「はい」

　多分もしかしたら、お局に怒られている場面かもしれない。大体上司よりもお局の方が怒る事が多く、時にはしょうもない理由で怒られてイライラをぶつけられる事だってある。
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