嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

 カルロは報告書の中の一ページを指す。そこには、時系列に沿って何が起こったかが書かれていた。

「元々は王都の幻獣騎士だったのが、近衛騎士に異動したのか」

 婚約破棄の数カ月前にアドルフは幻獣騎士から近衛騎士に異動していた。興味深いことに、リーゼロッテの悪評が広がり始めたのはその直後からだ。

 さらに、婚約破棄をしてしばらくするとアドルフは近衛騎士団の師団長に、昨年には副団長になっている。近衛騎士は高位貴族出身者が集められているので、伯爵家出身も珍しくはない。特筆すべき功績があるわけでもないのにこの出世スピードは異例とも言えた。

 さらに、別のページにはイラリア王女がアドルフをまるで恋人のように側に侍らせているのが何度も目撃されていると書かれていた。

「もしかして──」
「ああ。奥様の悪評を流したのは十中八九、王女殿下だ。それを裏付けるように、ライラという奥様の元侍女からも証言を得た。アドルフ殿は近衛騎士になった途端、奥様の元を訪問しなくなり、手紙もよこさなくなったと」

 カルロはテオドールの目を見て頷く。

(なるほどな)

 様々な疑問が解けていくのを感じた。
 イラリアは当時リーゼロッテの婚約者だったアドルフを気に入り、彼の周囲からリーゼロッテを排除しようとした。だが、正攻法で婚約破棄を命じてもオーバン公爵家に抗議されることが目に見えているので、リーゼロッテを悪者にすべく根回ししたのだ。

 そして、アドルフはリーゼロッテとイラリアを天秤にかけ、イラリアを取ったのだろう。

「胸糞悪いな」

 イラリアにもアドルフにも、反吐が出そうなほどの嫌悪を感じた。
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