嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

第4話

「どうするんだ?」

 カルロは静かにテオドールに問いかける。

「どうもしないさ」

 テオドールは一言、そう答える。
 蒸し返したところでリーゼロッテの心の傷を抉るだけだ。そんな仕打ちを受けたあとに嫁いだラフォン領では、夫にいないものとして扱われた。

(俺も最低なひとりだな)

 どんなに傷つけただろうと思うと、やるせない。あの頃の自分に会えるなら、もっと彼女をよく見ろと言って殴ってやりたいほどだ。

 リーゼロッテはテオドールに離縁を申し立てた。それは保留になっているが、彼女の気持ちを考えるとすぐに応じてやるべきなのかもしれない。

 脳裏に、自分を「旦那様」と呼び屈託なく笑うリーゼロッテの笑顔が浮かぶ。

(リーゼロッテ。俺は──)

 ただ無性に、リーゼロッテの顔が見たくなった。


 ◇ ◇ ◇


「ねえ、アイリス。どうして旦那様は〝血に塗られた辺境伯〟だなんて噂が立ったのか、理由は知っている?」

 昼下がりのティータイム。リーゼロッテはおずおずとアイリスに尋ねる。アイリスは紅茶を淹れていた手を止め、リーゼロッテを見た。

「どうしてそんなことを?」
「え? なんとなく気になって。その……確かに旦那様はぶっきらぼうで冷たい雰囲気があるけど、わたくしが嫌がることはしないし、部下達にも慕われているみたいだし──。どうしてそんな噂が立ってしまったのかしらって」
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