嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

 離婚を申し入れた日以降、リーゼロッテはテオドールと過ごす時間が格段に増えた。
 彼のことを完全に知っているわけではないが、それでも感情のままに理不尽に人を殺すような人ではないことはわかる。だから、何か理由があってこの噂が立ったのではないかと思ったのだ。

「つまり、旦那様にご興味を持ってくださっているってことですね?」
「え?」
「なるほどなるほど」

 アイリスは意味ありげに笑う。なんだか気恥ずかしくなったリーゼロッテは「深い意味はないのよ」と付け加える。アイリスは相変わらずニマニマしたままだ。

「残念ながらそのことについては私が話すことはできません。旦那様に直接聞くのがよろしいかと」
「そうよね。ごめんなさい、わたくしったら人の内情を陰で聞くようなはしたない真似を──」

 リーゼロッテが慌てて謝罪しようとすると、アイリスは「悪いように勘違いなさらないでください」と付け加える。

「わたくし、とても嬉しいんです。ずっと旦那様とリーゼロッテ様は本当の夫婦とは言い難い状況でしたので、リーゼロッテ様から旦那様のことを知りたいと思ってくださるほどふたりの距離が縮まったことに」
「アイリス──」

 アイリスは眉尻を下げるリーゼロッテを見て、ふふっと笑う。

「旦那様に、リーゼロッテ様が会いたがっていると伝えておきますね」

 アイリスはリーゼロッテを見つめ、ウインクしたのだった。

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