政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「少し前に。秘密にしているわけじゃないが、わざわざ発表する必要もないだろう」
「いや、そんなおめでたい話を発表しない手はないですよ。すぐにでも社内メールで知らせましょう」
「頼むからやめてくれ」


ノートパソコンを再び開き、今にもメールを作成する勢いの野原を止める。


「そうですか? 副社長がそこまで言うなら無理にとは言いませんが。しかしそうですか。副社長がご結婚を。そのせいだったんですね、最近顔つきや雰囲気が変わったのは」
「……そうか?」


貴俊は手で自分の顔をさらりと撫でた。
そう言われたのは初めてだ。


「全体的に柔らかくなったといいますか。副社長はあまり人を寄せ付けたがらないじゃないですか。世間で噂されている〝冷酷〟とまでは言いませんけど、一見近寄りがたい感じがしますから。まぁ背負っているものが大きいので、他人にも自分にも厳しくなるのは当然ですけど。とにかく人間味が出てきたように思います」


野原が饒舌に語る。滑らかで軽い口調は、開発案件の話をしていたときとは大違いだ。
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