政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
『平気? 家に入って大丈夫?』
血の繋がらない母親や姉にいじめられるのではないかと不安がよぎったが、十歳の貴俊になす術はない。
『おにいちゃん、おなまえは?』
貴俊の質問に答えず、逆に問いかけてきた。
『桜羽貴俊』
『さくらばたかとし? ねえ、おにいちゃん、おっきくなったらめいかをむかえにきて』
『え?』
『このおうちからだして。めいか、おにいちゃんといきたい。けっこんしたら、おうちをでられるんでしょう? だからけっこんして』
すっかり涙が乾いた頬で笑う。五歳児の無邪気なプロポーズだった。
結婚とはなにか、互いに理解などしていない。でも辛い境遇にいる彼女のお願いに、首を横に振れるはずもない。
『わかった。必ず迎えにくるよ』