政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

何度となくされてきたエスコートも、今夜はいつもとは気分がちょっと違う。ふたりの結婚生活がスタートする夜だからだろう。婚姻届を出したときよりも現実味があるせいか。

浮ついた心と少しの緊張、それから並々ならぬ覚悟も。決して混ざらないそれらが、明花を優しくいたぶる。

庭に面した掃きだしの窓を開け、貴俊が唐突にテラスに跪く。


「足を出して」


言われるままにおずおずと出した足に手を添え、貴俊は明花にパンプスを履かせた。

まるでお姫様みたいな扱いに戸惑いが半分、ときめきが半分。貴俊と出会ってからの明花は、経験のない感情に揺さぶられることが多くなった。

立ち上がった貴俊にエスコートされてテラスを下りると、ろうそくの灯りが目に飛び込んでくる。セッティングされたテーブルの周りをオレンジ色の炎がいくつも囲んでいたのだ。
庭全体にライトアップが施され、庭全体が幻想的な空間になっている。

リビングの窓から見えたはずなのに今の今まで目に入らなかったのは、貴俊しか見えていなかったせいだ。
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