政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
寝室にはシャワールームやパウダールームも完備しており、そこで数少ないメイク道具を広げた。
パーティーのときには万智に借りたヘアアイロンで巻き髪に挑戦したが、今日はそうはいかない。手の込んだセットはできないため、ざっくりと編んだみつあみをうしろでふんわりとまとめる。Tゾーンの脂浮きをパウダーで押さえ、チークを追加。唇は明るめのグロスで艶を出した。
パンプスを手にリビングへ行くと、ひと足先に着替えを終えた貴俊がソファから立ち上がった。彼も、パーティーのときに着ていたネイビーのスーツだ。おそらく明花に合わせてくれたのだろう。
「お待たせしました」
ついさっきまでナチュラルなヘアスタイルだったが、両サイドを整髪料で撫でつけ、いい男ぶりを見せつける。相変わらず素敵なため、明花は密かにため息を漏らした。
貴俊がゆっくり、ふわりと笑う。
月夜に花開く月下美人のよう。妖艶な笑みに鼓動が小さく跳ねた。
「庭に出ようか」
「はい」
貴俊は明花が持っていたパンプスを手に取り、もう片方の手を細い腰にあてた。